麻倉もも、“恋の歌”と共に歩んだソロデビュー5年の歳月 ボーカリストとしての成長を振り返る

 2ndアルバム『Agapanthus』の発売、TrySailの躍進、各キャラクターソングでの歌唱など、デビューから5年が経過し、9thシングルとなった『ピンキーフック』も「恋」にまつわるコンセプトで繋がっている。

麻倉もも 『ピンキーフック』Music Video(YouTube EDIT ver.)

 表題曲は現在放送中のテレビアニメ『カノジョも彼女』(MBS、TBSほか)のエンディングテーマだ。『カノジョも彼女』は週刊少年マガジンで連載中のマンガ作品を原作としており、高校生の主人公・向井直也と美少女たちの関係を描くラブコメディ作品だ。作詞・作曲には渡辺翔、編曲は倉内達矢が携わった同曲。ファンク〜ディスコライクなワウサウンドが効いたギターカッティングやベースサウンド&フレージング、ヒュっと吹き抜けるような弦楽器にはソウルミュージックらしさもあり、変化していく鍵盤楽器のトーンなど、サウンドの細やかな色付けがストレートなラブソングながら単調な印象はない。

 今回の楽曲は、これまでに彼女が歌ってきた楽曲のなかでもアップテンポでカラフルな彩りのある1曲であり、リズムやグルーヴに合わせて言葉が乗っかっていく1曲だともいえよう。これまでの麻倉が届けてきた楽曲といえば、麻倉の温かみある甘い声色を活かし、リスナーに歌詞の物語をよりよく聴いてもらおうというタイプの楽曲が多かったように思う。メロディラインと言葉が1音1語で結びつき、のびのびと歌っていく曲が多かったと言い換えてもいいだろう。

 この5年の間にも、麻倉は徐々に自身の歌い方に幅をもたせることに成功した。2ndアルバム収録曲で例を挙げれば、「Twinkle Love」ではウィスパー気味に、「今すぐに」では憂いを感じる落ち着いたトーンなど、様々な経験と実践を聴かせてくれている。

 今回のシングルでは、そういった伸びやかな唱法を一旦封印し、リズムに合わせるように歯切れよく声を乗せ、胸躍る恋模様をコミカルに描いた物語をうまく捉えようとしている。これまで一貫してラブソングを歌い続け、そのなかに巡る様々な情感を伸びやかに表現してきた麻倉ももにとって、「ピンキーフック」は今までにないタイプ。それに対して「新しい麻倉もも」で表現したのだ。

 今回もまたタイアップとなった作品と非常にかみ合い、「ピンキーフック」というタイトルから窺えるイメージ通り、キュートで陽気な1曲に仕上がっている。ソロ歌手として5周年迎えたが彼女は、今後どのような恋模様を歌ってくれるだろうか。

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