麻倉もも、“恋の歌”と共に歩んだソロデビュー5年の歳月 ボーカリストとしての成長を振り返る
3人組声優ユニット TrySailの一人、麻倉ももによる9thシングル『ピンキーフック』が8月18日にリリースされた。ソロ活動5年目という節目を迎えた彼女のこれまでを振り返りつつ、本作について記していきたいと思う。
先日に同じユニットに所属する雨宮天について書いたが(※1)、麻倉も2011年『第2回ミュージックレインスーパー声優オーディション』にて雨宮と夏川椎菜らとともに合格、2012年に声優としてデビューした。『アイドルマスター ミリオンライブ!』の箱崎星梨花役、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の環いろは役、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の須藤百々子役などを演じてきた。
2016年8月28日に行われた『Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-』でソロデビューを発表、11月2日にミュージックレインからデビューシングル『明日は君と。』をリリースした。
黒目がちの瞳とくりっとした目元、ブログで使用される特徴的な顔文字、自然体な発言・行動でメンバーやファンからも愛される彼女。TrySailではピンクのイメージカラーを担い、キュートな姿で人気を博してきた。
そんな彼女のソロシンガーとしての楽曲は、歌心を大事にしたポップなサウンドのラブソングが主だ。彼女の楽曲を聴けば、君を想い、恋焦がれ、瞬間的な心の高まりとセンチメンタルな未練に揺れる少女を思い浮かべるのは非常に容易い。「好き」「君」「恋」「愛」などの言葉を使いながら、歌詞上で多種多様なラブストーリーや恋心が描かれている。仮にそういったコンセプトを先に組んで制作に臨んでいたとしても、この5年間に渡って統一性を持って活動を続けていることは目を見張るものがあるだろう。
その強固なコンセプト性は活動初期から丁寧に整っていた。例えば、1stシングル『明日は君と。』と1stアルバム『Peachy!』に収録された「花に赤い糸」。この曲は同じくミュージックレインに所属するHoneyWorksによって制作され、2016年に公開されたアニメ映画『好きになるその瞬間を。〜告白実行委員会〜』の挿入歌として起用。麻倉は同作品で瀬戸口雛を演じている。バンドサウンドと弦楽器が絡み合ったスローなラブソングに仕上がった楽曲。当初はカップリング曲として発表されたが、『告白実行委員会』シリーズの人気も相まって、Spotify上では麻倉ももの楽曲で最も多く再生されている。
ソロデビューを飾ろうというタイミング、自分らしい歌を模索していたであろうこの時期において、丁寧にメロディを歌い上げているのが分かる。ある意味では、ソロデビュー間もない「素の彼女」の声色がこの曲にはあると思う。高校生の青春と恋愛劇という『告白実行委員会』シリーズ、恋愛模様を描こうとする麻倉ももはソロデビューを飾る初々しさがどことなくあった。両者のコンセプトや偶然がピタリと一致した素晴らしい1曲ではないだろうか。