アニメ『かげきしょうじょ』インタビュー
花守ゆみり×千本木彩花『かげきしょうじょ!!』インタビュー 歌劇と声優を結びつける共通項とは?
「歌も2階席に向かって歌っているのか、路上で歌っているのかで違う」(千本木)
ーーちなみに声優も養成所があったりしますけど、さらさたちの歌劇学校と共通する部分を感じたりしますか?
千本木:養成所時代よりも、事務所に入ってからの1〜2年のほうがすごく近い感覚だなと思いました。
花守:分かる! 紅華歌劇音楽学校に入った時点で、みんなすでに才能を持って選ばれている子たちなので、その才能を持った者同士が、ほかの才能ある人を見て「どうしよう」と葛藤していくんです。自分の才能は、自分には一番見えないものだから、頭を抱えてしまう。実際に「実力があるのに」と星野さんが山田彩子ちゃんに言うシーンもありますし。私も事務所に入った最初の頃は、周りの才能に圧倒される感じがありました。
千本木:入りたての頃は、誰々にオーディションの話が来たとか、どういう仕事をやったとか、周りのことばかりが気になってしまって。もちろん今もありますけどね、そういうことは。
花守:それはきっと永遠にあると思うよ。
ーーどこの世界にもヒエラルキーはあるものですね。
花守:でもそのピラミッドのどこに自分がいるのか、自分では明確に分からないですから。ある程度は分析できるけど、結局それは自己評価でしかない。他人から見た評価なんて自分じゃ絶対に分からないですし。だからこその苦しみをみんなが持っていて、見えない自分と才能ある周りとで自分自身を研磨していく感じは、声優ともすごく通ずるところがあると思います。
ーーまた、さらさには『ベルサイユのばら』のオスカル役を演じたいという夢・目標があります。お二人にとってのオスカルは何ですか?
千本木:私が声優を目指したのは『テニスの王子様』を見て、皆川純子さん演じる越前リョーマがかっこよくて、「こんなステキな職業があるんだ」と思ったのがきっかけです。これまで自分がすごくやりたいと思って実際に演じることができたのは、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』でのトリッシュ・ウナでした。『ジョジョ』は特に第5部が好きで、マネージャーさんにも「5部の制作が決まったら、記念受験でもいいからオーディションを受けたい」と言っていたんです。受かるとは思っていなかったから自分でもすごく驚きましたし、この時に感じた感動はもう二度と味わえないんじゃないかと思っています。ちょっとでも制作時期がずれていたら、きっと私はトリッシュ役をできていなかったと思うし、今の私がオーディションを受けても受かっていなかったかもしれない。あの瞬間の、あの年齢の私だからこそできたものだなって。
花守:ちゃんと選ばれるべくして選ばれる自分になれたのは、すごいと思う。
千本木:すごくありがたいことでうれしかったですけど、そこから先がまだまだあるとより感じた作品でもありましたね。でも私の中では、トリッシュを演じられたのがターニングポイントです。
ーー花守さんは?
花守:私は役というよりも、さらさにとってのオスカルのようなものを、ずっと探し続けていくのだろうなと思っています。短期的に憧れる役はもちろんあるんですけど、この仕事に就いたからには、いつか自分が演じるべくして演じる役というものを、ずっと探しているような気がします。こういう子がやりたいとか、ああいう役もやりたいという気持ちは常にあって、この声で演じられる役なら全部やりたいと思っちゃう欲張り人間だし(笑)。性別や年齢でその役を演じる人を決められるのは絶対嫌だと思ってしまうので、それに抗いながら色々な役を演じ続けていくんでしょうね。
千本木:そういうのもきっと大事だよ。
花守:だから、運命の役をずっと追い求めると思います。最後まで運命の役に出会えなかったら寂しいけど、永久に燃え続けたいと思うので、そういう意味では声優は自分に向いている仕事なのかなと。
ーー音楽についての話に移りますが、宝塚歌劇団の舞台音楽も手がけている斉藤恒芳さんが、劇伴やエンディングテーマ「星の旅人」の作詞作曲編曲も手がけられていて。
千本木:とても本格的ですよね。普通のキャラクターソングとは全然違って、ミュージカルなど舞台で歌うための曲を収録しているという意識でした。
花守:きっと実際に宝塚の方たちも、こんな風にディレクションを受けているんだろうなと思って、感動しながら斉藤さんの言葉を聞いていました。声優のディレクションの現場では絶対聞かないようなやり方なんです。キャラクターソングって、その子自身の性格を表したような曲に演技を交えて歌うことが多いんですけど、斉藤さんは舞台上で愛ちゃんたちが演じている様子を想定して、「ここは歌いながら階段を降りて来る」とか、「手と手を取り合っている」とか、動きのディレクションがあってすごく面白かったです。
千本木:キャラクターたちが、その曲をどういう舞台で歌っているのかを考えてくださっていて。だから「この瞬間は手を取り合って、側で歌っているよね」とか、「この時はちょっと離れたところにいて歌っている」と、状況説明を交えて「こう歌ってみよう」と言ってくださって。より想像力が必要でしたけど、それを考えるか考えないかで全然違うものになる。2階席に向かって歌っているのか、路上で歌っているのかで歌も全然違うわけで、そこはお芝居と同じだなと思いました。
花守:改めて思い出すと、さらさや愛ちゃんたちがファントム先生(安道守)から「今おまえの前に客は何人いるんだ」って問われるシーンがあって、そことすごく通じるなって思いました。だから歌のディレクションというよりも、舞台演出みたいな感じでした。お客さんは何人いて、目線は今ここにあってと、視線誘導の話なんかも出ましたから。完全に舞台の上で歌っているかのようなディレクションで、「なるほど、そういう風に組み立てるのか」とすごく勉強になりました。
千本木:新しい発見がたくさんあったね。
ーー歌い方とか声の出し方も、いわゆるキャラクターソングとは違って。
千本木:そうですね。ミュージカル調だし、さらさは男役なので、いつもは使わないちょっと低めの声を使いました。あと私は、ぜひ「星の旅人」の2番の愛ちゃんの声を聴いてほしいです。私は聴いて鳥肌が立ちましたから。さすがゆみりちゃん!
花守:うれしい! そこは自分から、「こういう風に歌いたいです」と言ったところでもあって。個人的に、原作を全部読んだ上で曲を聴いた時、愛ちゃんの変遷を聴いてほしいと思ったんですね。1番はエンディングテーマとして使われるので娘役としてさらさの2〜3歩後ろに引いているんですけど、2番は原作の展開を踏まえてさらさと同じ場所に立つイメージで表現しています。原作から見てくださっている方にも、喜んでもらえたらいいなと思って歌わせていただきました。
千本木:すでにフル尺は先行配信されているので、ぜひ聴いてほしいです。
ーーほかのキャラクターの組み合わせによるバージョンもあって、どれも聴き応えがありますね。
花守:曲は同じですけど、曲名と歌詞がみんな違うんです。
千本木:それぞれの心情に合わせたものになっていて、エンディングの絵も変わるし。これを考えた人は天才です!
花守:毎回鳥肌が立ちます。
ーーほかのキャストさんのバージョンを聴いてどうでした?
千本木:私たちより先に録られていたんですけど、エモさの塊で泣けました。
花守:自分たちのレコーディングの時に「皆さんはどんな風に歌っているんですか?」と、流してもらったらどれも素晴らし過ぎて。「今から歌うんですけど……!」って気後れしそうになりました。
千本木:歌う前に聴かないほうが良かったね(笑)。でも本当に皆さん役と声がぴったりで、改めてキャスティングの素晴らしさを感じました。
花守:特に佐々木李子さん(山田彩子役)は、本当にエトワール(宝塚歌劇における歌姫の意味)のようでした。演じている時の山田ちゃんとのギャップがすごくて、まさしく天使の歌声という感じで。
ーーあと劇中歌として、花守さんは奈良田愛が所属していたアイドルグループ=JPXの曲も歌っているんですよね。
千本木:心が全然こもっていないやつね(笑)。
花守:JPX時代の愛ちゃんなので、あえて感情を殺して歌ったんです。歌を流してチェックしていたマネージャーさんの後ろを通りかかった人が、「仮歌ですか?」って聞いたという(笑)。そこも含めて、愛ちゃんは楽曲でもアニメの中でも、色々な表情を見せることができたキャラクターになったと思います。髪の毛も作中で伸ばしたり、変化が見られるんです。でも逆にさらさは最初からずっと変わらずそこに居続けるので、愛ちゃんの変化によって時間経過が分かるというのも、すごく面白いなって。
千本木:『かげきしょうじょ!!』という作品が好きなスタッフさんたちが集まっているので、その愛をすごく感じます。その中に一緒にいられていることも誇りに感じますし。
花守:愛と熱量を一身に受けて、大切に作られている作品。それは音楽だけじゃなく、色々なところから感じますね。
ーー最後に、今後の見どころをお願いします。
千本木:第七幕でさらさの過去が明かされ、さらさと愛ちゃんが本当の友達というか、関係が一歩進んだところなので、その先の関係も見ていただきたいです。また、そこから怒濤のように各メンバーの話が入ってくるので見逃せないです。
花守:今後は運動会などのイベントもありますので、ぜひ楽しみにしていてください!
■作品情報
アニメ『かげきしょうじょ‼︎』
【TV】
・AT-X 7月3日(土)より毎週土曜24:00~
(リピート放送:月曜23:00~、水曜11:00~、金曜17:00~)
・TOKYO MX 7月3日(土)より毎週土曜25:00~
・BS11 7月3日(土)より毎週土曜25:00~
・HTB 7月7日(水)より毎週水曜25:50~
※放送日時は変更になる可能性がございます。
【配信】
・ABEMA 7月3日(土)より毎週土曜25:00~
・dアニメストア 7月3日(土)より毎週土曜25:00~
他、各種配信サイトにて毎週火曜25:00より順次配信開始
<スタッフ>
原作:『かげきしょうじょ!!』斉木久美子(白泉社『メロディ』連載)
監督:米田和弘
シリーズ構成:森下 直
キャラクターデザイン:岸田隆宏
サブキャラクターデザイン:飯田恵理子、髙田晃、牧孝雄
プロップデザイン:古賀美裕紀
総作画監督:今岡大、髙田晃、福永智子、牧孝雄
美術設定/美術監督:谷川広倫
色彩設計:坂上康治
撮影監督:浅黄康裕
編集:今井大介
音響監督:長崎行男
音楽:斉藤恒芳
音楽制作:キングレコード
制作:PINE JAM
<キャスト>
渡辺さらさ:千本木彩花
奈良田 愛:花守ゆみり
杉本紗和:上坂すみれ
星野 薫:大地 葉
山田彩子:佐々木李子
沢田千夏:松田利冴
沢田千秋:松田颯水
野島 聖:花澤香菜
中山リサ:小松未可子
竹井朋美:寺崎裕香
安道 守:諏訪部順一
奈良田太一:野島健児
里美 星:七海ひろき
白川暁也:高梨謙吾
白川煌三郎:子安武人
<主題歌>
オープニングテーマ:saji 「星のオーケストラ」
楽曲配信はこちら
エンディングテーマ:渡辺さらさ(CV.千本木彩花)×奈良田 愛(CV.花守ゆみり)「星の旅人」
先行配信はこちら
Ⓒ斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
■リリース情報
『星の旅人 / シナヤカナミライ』
発売日:2021年8月25日(水)
定価:¥1,430(税込)
先行配信はこちら
<収録予定内容>
1. 星の旅人
渡辺さらさ(CV.千本木彩花)×奈良田 愛(CV.花守ゆみり)
2. シナヤカナミライ
杉本紗和(CV.上坂すみれ)×山田彩子(CV.佐々木李子)
3. タイトル未定
4. 星の旅人 off vocal version
TVアニメ『かげきしょうじょ‼︎』音楽集
発売日:2021年9月29日(水)
定価:¥3,630(税抜価格¥3,300)
<商品仕様>
・型抜きスリーブケース(初回製造分のみ)
・原作者・斉木久美子描き下ろしジャケット仕様
アニメ『かげきしょうじょ‼︎』オフィシャルサイト:https://kageki-anime.com
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