『Q.E.D. bi』インタビュー
ぜんぶ君のせいだ。、寄り添うことで発揮される7人の個性 『Q.E.D. bi』に刻まれた葛藤と成長を語り尽くす
ぜんぶ君のせいだ。が現7人体制で2作目の再新録アルバム『Q.E.D. bi』をリリースした。体制が変化するたびに再録アルバムを制作し、“今のグループの色”へと楽曲を染め上げてきたぜん君。であるが、今回は文字通りの“証明完了”を掲げ、ぜん君。の楽曲がいよいよ完成形を迎えたことを宣言している。そして、すべて既発曲であるとはいえ、3月にリリースされた再新録1作目『Q.E.D. mono』がライブベスト盤のような作品だとしたら、『Q.E.D. bi』はオリジナルアルバムに近い内容の作品であり、7人の個性豊かな声で歌われる“寄り添うことの大切さ”こそが今作の極みだと言っていい。メンバーそれぞれの決意と覚悟が表れた『Q.E.D. bi』について、ぜんぶ君のせいだ。7人全員に話を聞いた。(編集部)
歌声の成長と個性を味わえるアルバムに
ーー『Q.E.D. mono』(以下、『mono』)に続く再新録アルバム2作目『Q.E.D. bi』(以下、『bi』)ですが、まずは完成した手応えを一人ずつ伺えますか。
如月愛海(以下、如月):今回は“綺麗カッコいい”曲の並びになっていると思うんです。「Folia Therapy」みたいに2年くらいライブでやってない曲とか、ぜん君。のちょっと大人な部分が出ている曲も多くて。可愛い曲、綺麗な曲、官能的な曲、カッコいい曲みたいにわかりやすく出たと思いますし、今の7人の個性的な声を聴ける1枚になったなと思いますね。
征之丞十五時(以下、十五時):「Folia Therapy」は私が加入してからはライブでやったことないんですけど、この曲目をもらって、「いよいよ新体制でやっていくんだ!」という気持ちになりました。みんな違う個性の声質なのに曲にすると揃っているなと思う部分もいっぱいありますね。
ーーもともとぜん君。に思い入れの強かった、ふふさん、喑さん、襲さんはいかがですか。
雫ふふ(以下、ふふ):『bi』はすごく大人っぽくなったなと思うんですけど、“病みかわいい”部分もすごく強いので、苦しそうな感じを出したりとか、そういう歌い方を心がけました。あとは、覚悟を決めて強い気持ちを歌う曲が多いと思ったので、そこに自分の気持ちを乗せることにこだわりました。
甘福氐喑(以下、喑):だいぶ前の曲とか、「唯君論.」の7人バージョンが入っていることがすごく嬉しくて。個人的にはぜん君。で一番好きな「Folia Therapy」も入っていたので、曲目をもらった瞬間に「きた!」って、ひとりで盛り上がっていました(笑)。
もとちか襲(以下、襲):すごく踏み込まれた曲目だなと感じました。「無題合唱」と「独唱無題」って伝説の曲みたいなラスボス感があるんですけど(笑)、それが一緒に入っているのもすごく意味を感じましたし、『mono』はぜん君。入門編みたいだと言ってたんですけど、『bi』はさらに一歩踏み込んだぜん君。が知れるアルバムだと思いました。
ーーメイユイメイさんと个喆さんにとっては、ぜん君。の代表曲に声が収録される最初の作品になりましたけど、いかがでしたか?
メイユイメイ(以下、メイ):自分が入ってからすぐなのに、ぜん君。でずっとやっていなかった曲をやらせていただけるのが嬉しくて。これからの私たち7人に期待してもらえた気がしました。それと『mono』からちょっとしか経っていないのに、『bi』はみんなの声がすごく大人びているんです。個性が違う7人の声も綺麗に揃っていて、めちゃくちゃ強い1枚だなと思いました。
个喆:「これ、やれるだろ?」みたいな、試されている気持ちになりました(笑)。「唯君論.」みたいに感情が大事な曲がいっぱいあるのは、歌えるようになったと思ってもらえたからなのかなって。歌の中で7人が団結しているのが見えるから、「大事」「ずっと一緒」というアルバムだと思っています。
ーー皆さんが挙げている、歌声の変化や成長について具体的にどう感じているんでしょう?
如月:まず私が感動したのは、そもそも最初に十五時が加入した時、十五時の低音を活かすために「AntiIyours」みたいに低めに作られた曲が多かったんですよ。でも、今は甘福氐とかこてちゃん(个喆)が高めの声で歌うので、十五時も今までより高めに歌っているところがたくさんあって。これだけライブもやってきているから、「十五時もこうやって合わせにいったり、一緒に寄り添って歌おうという気持ちが生まれたんだな」って思いました。
十五時:あははは。2年前の再新録のときは、自分の声が小さくて低かったのもあって、エフェクトがかかっているみたいで聴き取りにくいなと思っていたんですけど、今回は自分の声がよく聴こえるなって(笑)。確かにキーも上がったし、そういうことなのかな?
襲:私も『bi』の十五時の声めっちゃ好き!
十五時:ありがとう......! あと、十五時と甘福氐って声質が全然合わないはずなのに、今回は一緒に歌うところがいっぱいあって。
喑:多いよね。私たち、可愛い曲部隊だから(笑)。
“ぜん君。のリアル”が詰まった「Folia Therapy」
ーーそんなお二人の推しポイントはどこなんでしょう?
十五時:「無題合唱」の〈恨み穢れも 解けない奥に沈む〉かな。
喑:そのあとの〈どうして? どうして〉も、十五時からのねちだからね。最初は合わなくて不協和音でしたけど(笑)、『mono』でめっちゃいい感じに寄り添えるようになってきて、『bi』で確信に変わった感じです。
十五時:やったね!
喑:ガッツポーズ(笑)。
ーー(笑)。そして今やレア曲となった「Folia Therapy」ですけど、今のぜん君。でやってみると、どういう曲になりましたか。
如月:良い意味で子供になったと思いました。ぜん君。が当時4人でかなり完成されてきた時期に録った曲だったので、酸いも甘いも経験した、官能的要素が強めの一筋縄ではいかない女みたいな曲だったんです(笑)。でも、今回7人の声になってみると、まだまだ未熟な部分がどうしてもあるなと。苦しいことや楽しいことを知っていく過程みたいな感じなので、甘福氐や襲やふふが酸いも甘いも経験した側に合わせてくれたり、逆に私や十五時やメイこてが寄り添っていくみたいなイメージですね。結局、誰かに支えてもらわないと生きていけないって感じるようになりました。だから「Folia Therapy」には、今のみんなのリアルが出ていると思います。
メイ:私は「Folia Therapy」のふふがすごく好きです。ふふが嗚咽しながら歌っているようなところが何カ所かあって、そこがめちゃくちゃ合っているというか。本当に苦しみながら歌ったんだろうなというのが伝わってきて、鳥肌が立ちました。
ふふ:嬉しい......!
喑:息の使い方がめっちゃ上手だよね。〈君が二度と 誰も望まぬように〉のところが本当に苦しそうで、「はぁ......」みたいになっていることが素敵!
ーーふふさんは、「Folia Therapy」に対してどんな感情を見出したんですか。
ふふ:その人に対してすべてをあげるから、自分だけを見ていてくれという強い気持ち。ふふも人に依存しがちなので、苦しい気持ちを重ねました。最近はステージでも「見てくれ!」という感じは強く出しますし、人が歌っている前をよく通りがちになっちゃいました(笑)。
如月:ふふは覚えることが苦手だったり、いっぱいいっぱいな時が多かったんですけど、何度もライブを重ねていくにつれて生まれた自信がちゃんとステージでも溢れているんです。歌っている人の前に出たりするなんて、自信がないとできないことだから。ちゃんと自分の体から声が出るようになったのもすごくいいですよね。
ーー素晴らしいです。个喆さんは、歌録りで特に印象深かったことはありますか。
个喆:こては割と最初の方の順番で録ったんですよ。いつもみんなの声を聴いてない状態で録るから、「次の人はこうやって歌うかな?」「これでありますように!」と想像しながら歌うんです。その後に聴いたら「揃ってるー!」ってなるから、間違っていなかったんだなと思って。みんなのことを信じて歌えるようになりました。
如月:未来を予想したんだね。
个喆:うん、未来予想型(笑)。ふふと一緒に歌う時が一番気を付けていて。个喆はスコーンって行っちゃうタイプだから、ふふの優しい声を潰したくないなと思って歌います。
ふふ:「無題合唱」の〈頭撫でてくれたんだよ?〉のところとか、いつも个喆が儚い声で歌ってくれているのを感じるので、ふふも自分らしく歌えます。
「誰かの代わりなんて絶対にいない」
ーー『mono』も『bi』も孤独を歌っていることは変わらないけど、『mono』は「孤独に追いやられた先に君がいた」というタイプの曲が多くて、『bi』は「孤独同士でしっかり手を取り合っている」曲が多いですよね。『bi』は“君と僕”のことをちゃんと歌っているという意味で、互いに寄り添いながら歌ったという皆さんのレコーディングにも関係しているんじゃないかと。
如月:本当にそれは感じますね。『bi』はいろいろな孤独が混ざっている中にも、優しさをすごく感じます。自分にも誰かがいることがわかるし、誰かのために歌っているのに、最終的に自分のためになっている曲も多いなって。
襲:確かに『mono』のレコーディングの時は、一人ひとりの個性を出していくことが優先だったんですけど、今回は前の人が歌っているのを聴いて、「じゃあ自分はこうやって歌い繋ごう」みたいな意識が出た気がしていて。みんながいると思えたからこそ、気持ちを一つにしようと歌った気がします。
ーーそれは、あえて前回と変えようと思ったからなのか、それとも曲がそうさせたのか。どちらだと思います?
襲:曲ですね。「君想ゐ花散りぬ」の〈味方よ この世でただ一人だけの〉は、メイから私の流れで歌っているパートなんですけど、ここがめっちゃ好きで。先にレコーディングされていたメイの〈味方よ〉が優しく寄り添ってくれるような声だったので、自分も違和感なく歌い繋げるように意識しました。日頃一緒にいる時間も多いから、「きっとこういう感情で歌っているんだろう」ってなんとなくわかるようになりましたし、そもそもメイは語尾を伸ばす歌い方が多いんですけど、〈味方よ〉もすごく伸びていたんですね。それも相まって包み込んでくれるような優しさを感じました。
メイ:歌で寄り添うのって、言葉では簡単に言えるけど難しいじゃないですか。まだ出会ってからそんなに時間も経っていないのに、そういう信頼関係ができているのはすごく嬉しいです。メイは好きな人とかメンバーを大事にしたいからこそ、周囲が敵になっても絶対に私だけは味方でいたいなと思って歌いました。
ーー想いが込もっているという点では、1曲目の「Cult Scream」も外せない曲です。ポエトリーリーディングやシャウトもあって、ぜん君。らしい要素がたくさん詰まっている曲ですが、特に如月さんの〈唯一で居たいと願った〉の歌唱には切実さを感じました。
如月:「Cult Scream」をちゃんと録り直してみて思ったのは、みんなが唯一でいてほしいという想いに変わりはないということで。みんな勘違いするけど、代わりなんて絶対にいないんですよ。代わりに誰かを好きになろうとしなくていいし、ただその子がいいなと思うところを見つけて好きになってほしいから。私たちも脱退と新メンバー加入を繰り返して、知っていたぜん君。とは違うと思われる分には仕方ないんですけど、誰かの代わりって言われるなんて嬉しくないじゃないですか。そうなるのは人間関係全般において嫌なので。“スクリーム”の部分は「私たちだけを見てくれ!」っていう叫びでもありますね。
ーー終盤のシャウトパート、印象的ですよね。
如月:今回は、メイ、めぐ、喑、襲が叫んでます。
ーーそれぞれのパートが〈幻想的〉〈本能的〉〈妄想的〉〈解放的〉と、1単語ずつで分かれているんですよね。
如月:その人に言葉が合っているよね。
メイ:メイなんて〈幻想的〉よ?
如月:一応、メイは天使だから。
メイ:一応って言わないでよ(笑)。