“新アイドル”誕生の歴史

ももいろクローバーZの歴史を紐解く 第4回:国立競技場ライブ~ソロ活動の活発化

朝ドラ出演、お笑い進出、5人のソロ活動

 グループとして充実期を迎えたことで、メンバーのソロ活動も増加していった。百田は2016年にNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』で主要人物・小澤良子(多田良子)に扮し、夫役・田中要次を前に妙味ある芝居をみせた。書籍『ももクロ裏伝説』(2016年)で百田はオーディション時、本気で役を取りに来ていると思われなかったエピソードを明かし、グループ活動を中心とする考え方が周囲に引っ掛かりを生んでいるのではないかと分析。それが機になったのか個別の仕事も精力的となり、特徴的な声を生かしてハリウッド映画『ブラックパンサー』(2018年)の日本語吹替やアニメーション映画『魔女見習いをさがして』(2020年)で声優を担当。2021年公開の映画『すくってごらん』では陰を持ったヒロインを好演するなど、役者として脚光を浴びている。

 有安は2016年から始まったソロコンサート『ココロノセンリツ』シリーズで新境地を切りひらいた。作詞・作曲の「小さな勇気」はやわらかな日本語をつかった歌詞が特徴的で、彼女自身のメンタリティが表出した楽曲だった。雑誌『OVERTURE No.009』(2016年)のインタビューで、有安はソロコーンサートを通して「いままでどういう過程で曲ができあがってくるのか、細かい部分までは知らないままでレコーディングをしていたけど、今回、最初から曲作りに関わることで、それもよくわかった」とアーティストとしての進歩を語った。これは後々、グループ脱退からソロデビューに至るまでの大きな経験となったのではないか。

 高城はソロコンサートをいち早くおこなった。2015年3月9日、ソロコンサート『高城の60分4本勝負』を名古屋CLUB QUATTROで開催。また2017年からは、芸人・永野と組んでお笑いライブ『永野と高城。』をおこなっており、2020年末には同コンビで『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)に出演。コメディのセンスを発揮している。2020年にはドラマ『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)で森崎ウィンとダブル主演。メンバーのなかで初めて連ドラ主演の座をつかんだ。

 玉井は、オムニバス映画『アニバーサリー』(2016年)のなかの一編「ハッピーバースデー」や、香取慎吾と共演したドラマ『ストレンジャー ~バケモノが事件を暴く~』(テレビ朝日系/2016年)での芝居が良かった。ももクロ主演の映画『幕が上がる』(2015年)では、原作者の劇作家・平田オリザが玉井を絶賛したと言われているが、確かに俳優としてのポテンシャルがとても高い。2018年には、アクロバティックなパフォーマンスが醍醐味のサムライ・ロック・オーケストラの舞台『マッスルファンタジー オズの魔法使い プレミアム公演』に特別出演。台詞に頼らず身体を使った表現で観客を魅了した。

 ソロ活動という点では、佐々木彩夏の飛躍が興味深い。川上も自著『ももクロ流』のなかで佐々木について「浜崎あゆみさんが大好きでそのステージをよく見ていたり、演出思考を持っていると思う」と語るように、裏方的な動きも目立つ。2016年のアメリカツアーではセットリスト作りやステージ演出の仕事にも参加。石川ゆみの振付や、花柳糸之による日本舞踏をメンバーに伝授する役割まで担った。活動初期からセルフプロデュースに長けていた佐々木だが、全体を見渡しながら自分の世界観の表現に取り組みはじめた。2019年には総合プロデューサー兼メンバーをつとめるアイドルグループ、浪江女子発組合を結成。プロデューサーとして目が離せない存在となった。

 2015年頃から活動範囲がさらに広がり、個々の動きも目立ってきた。ももいろクローバーZの5人は、このまま揺るがないものとして存在し続けると思われた。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter(@tanabe_yuuki)

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