柏木由紀、変化するアイドル界の中で掴んだ自分らしさ 安心して楽しんでもらう存在へ

柏木由紀が掴んだ自分らしさ

 柏木由紀が、7年5カ月ぶりとなるニューシングル『CAN YOU WALK WITH ME??』を3月3日にリリースする。同作は、WACKの渡辺淳之介がプロデュースを手がけたことでも大きな話題を呼んだ。柏木由紀はAKB48の最年長メンバーとして、今年30歳を迎える。14年というキャリアの中で掴んだ自分らしいアイドルとしてのあり方、そしてこれからの理想像について聞いた。(編集部)

アイドルは「時代とタイミング」と密接につながっている

ーーいきなりですが、この1年の「柏木由紀」ってどうでした?

柏木由紀(以下、柏木):変化の大きい1年でしたね。それも、自分が変わったというより、正直な話、まわりからの風当りが弱くなったかなって。

ーーそんなに風当りが強かったですか?

柏木:AKB48が歌番組に出るたびに「まだいるの?」という声が多かったんです。それがこの1年で少なくなった印象があって。(2019年11月に)「30歳までAKB48にいます」と発言したことや(2020年2月に)YouTubeチャンネルを開設したあたりから、少しずつ共感してくれたり、支持してくれる人が増えた印象があるんです。もちろんマイナスな意見はあるけど、プラスの声を耳にすると元気になれるし、AKB48に入って初めて自分に自信が持てた気がします(笑)。

ーーそうだったんですね。逆に、アイドルに詳しくない人が歌番組を観た時に柏木さんがいることでAKB48と認知できる、という役割もあるのかなと思ってました。

柏木:私が“目印”になれているとしたらありがたいです。自分をきっかけに「いまのAKB48にかわいい子がたくさんいる」ことを知ってもらいたい。実際、SNSで「柏木の後ろにいる子がかわいい」「柏木の右にいる子の名前は?」といった投稿を見るとうれしくなります。

ーー先ほどYouTubeの話がでましたが、個人的には柏木さんのnoteが面白くて。

柏木:あ~! 最近更新できていないんですけど、下書きは3本くらいあるんですよ。上手くまとまらなくて。

ーーnoteをはじめた理由は?

柏木:単純に時間があったのと、SNSが増えていくなかで、noteは自分の気持ちをそのまま伝えられるツールだと思ったんです。テレビでは時間がないし、インスタは写真がメインだし、YouTubeは生の言葉だけど、「分かりやすさ」を求められますから。YouTubeに「こんなにしゃべる人なんだ」「こんなに元気な人なんだ」という反応があって、じゃあ、noteを使ってよりパーソナルな部分を誤解なく伝えようと。

ーー柏木さんの文章は理路整然としていて読みやすいです。

柏木:自分を客観的に見られるようになったから、かもしれません。「振り返るとこうだったな」と思うことも増えたので。

ーーアイドル・柏木由紀の「種明かし」みたいなことまで書いていて驚きました。

柏木:最近、そうするようになりました。以前はキレイな部分を見せることがアイドルのいいところだと思っていたけど、「こういう意図でやってます」と明かしたほうがファンの方以外にも興味を持ってもらえることに気がついたんです。

ーー昨年から配信ライブが増えましたが、「配信だからこその表現」は意識していますか?

柏木:「配信だから」というわけじゃなく、いつものライブと同じように表情は意識しています。ただ、ライブで盛り上がっている時にファンの方はそこまで表情を見てないだろうなと思うこともあるし、遠い席だと見えてないかもしれないけど、配信なら表情まで確実に見てもらえるというのはあるのかなって。だから、いつも通り丁寧にパフォーマンスすることを心がけています。

ーーいまは握手会もオンラインでの交流に替わっています。

柏木:アイドル界には「釣り」と言われるようなファンの興味を引くための手の握り方や目線の動かし方のテクニックがあるんですけど、オンラインではそれがいっさい通用しなくなったんですよ。ただ、個人的には年齢を重ねて「釣り」では勝負できないと気づいてから会話に力を入れるようになって。ファンの方それぞれのことをもっと知るようにしよう、ファンの方には「ゆきりんの話を聞きたい」「ゆきりんに報告したい」「会話をしていると楽しい」と思ってもらおう、と心がけていたんです。

ーーこれまでやってきたことが活きた。

柏木:最初は必要に迫られた路線変更だったんですけど、いまはオンラインお話会をめちゃくちゃ楽しんでいるし、ファンの方も楽しんでくれているように感じます。握手会以上に1対1で話している感覚があって個人的には好きですね。

ーー柏木さんは環境の変化に応じて楽しめるタイプなんですね。

柏木:AKB48はこれまでもいろんなことがあったので、臨機応変に楽しめるようになったんです。一つひとつに振り回されていたらしんどいので(笑)。

ーー昨年末にディナーショーを開催したことも、柏木さんらしいアイドルの形を示したと思います。

柏木:本当はグループを卒業してからディナーショーをやりたいと思っていたんです。いつか踊ることがしんどくなるだろうな、フリフリの衣装だって着られなくなるかもしれない。そう考えると、ディナーショーで歌を届けることがステージに立ち続ける方法なのかなと思って。

ーーアイドルとしてできることを深く考えているんですね。

柏木:先々のことが心配なんです(笑)。それがグループ在籍中にお話をいただいて、去年はお客様の前で歌う機会がほとんどなかったこともあったので、「やらせてください」と。結果的に、ディナーショーという形でファンの方と対面できてよかったし、卒業後じゃなく、いまやってもいいことなんだと思いました。

ーー確かにアイドル経験者で歌い続けている方はディナーショーをやっているイメージがあります。松田聖子さんしかり中森明菜さんしかり。

柏木:私がディナーショーをした会場も、前日が元キャンディーズの伊藤蘭さんでした。

ーー柏木さんはずっとプレイヤー側でいたい気持ちがあるんですか?

柏木:そうですね。やっぱり一番やりたいことは歌うことで、ステージに立ってファンの方たちの前で歌い続けたいんです。

ーー以前、「アイドルを育成する学校を作りたい」と言ってましたよね。

柏木:あ~、言ってましたね。15歳でAKB48に入ったので、アイドルとしては10年経った25歳くらいが限界なのかなと思っていたんです。実際、25歳前後で卒業するアイドルって多いじゃないですか。もしグループを卒業してもアイドルには関わっていたくて「アイドルを育成する学校を作りたい」と話していたんです。ただ、蓋を開けてみたら「私、30歳になっても現役じゃん!」って(笑)。じゃあ誰かに託さないで、できる限り自分でやりたいなと。自分が表に立っている限りは学校やプロデュースはやらないと思います。現役でいる限り、もし売れるアイデアがあったら自分に使いたいじゃないですか(笑)。AKB48の公演をプロデュースしたり、後輩のために動くことはあると思いますけど。

ーー最近、元アイドルの方がアイドルをプロデュースすることも増えてきたじゃないですか。指原莉乃さんの=LOVEなんて、その筆頭だと思います。

柏木:≠MEもそうですけど、「さっしーがプロデュースしてるから」というより、純粋にアイドルとして見てます。

ーーアイドル界の大きな流れとして、選抜総選挙があるAKB48から、総選挙はないけど選抜制の乃木坂46を経て、最近は日向坂46や=LOVEが全員選抜で、STU48やNGT48、SKE48も同様の形をとっています。グループ内の競争よりみんなで一緒にゴールを目指すほうが、世間的にも歓迎される空気があるのかなと思うのですが、柏木さんはどう見てますか?

柏木:確かに、「みんなで頑張ろうね」という世の中の流れに対応してアイドルグループも変化している感じがしますね。AKB48でいろいろやっておいてなんですけど、私もみんなで明るく楽しくやるほうが好きなので(笑)、いまの流れはすごくいいなって思います。いまの時代の空気だから、30歳になってもAKB48にいられるのかなとも思いますし、ずっと競い合っていたら心が折れていたかもしれない。実際、2017年と2018年は総選挙を辞退しているので。

ーー一方で、総選挙をはじめとした「仕掛け」はAKB48を知ってもらうためにも必要だったと思います。

柏木:もちろんです。アイドルは「ファンが見るもの」という概念があったけど、様々な「仕掛け」があることで一般の方も興味を持ってくれてファン層が広がったと思うので。ただ、いまの時代にやったら「ヒドい」「可哀想」という声はもっと大きくなっている可能性はありますよね。アイドルは「時代とタイミング」と密接につながっているなと思います。

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