Awesome City Club、きのこ帝国、フレンズ……映画『花束みたいな恋をした』彩る音楽 物語を動かす重要なカギに

映画『はな恋』で音楽が描き出す青春

 Awesome City Clubはこの映画で最多の5曲が登場。2015年のデビューから、その時間軸に沿って楽曲が流れることで経過する年月を示唆している。様々なポップカルチャーに囲まれ、スマートな暮らしを育んでいく麦と絹の暮らしにAwesome City Clubのスタイリッシュなダンスナンバーはとてもよく合う。スマホから、PCから、スピーカーから流れるAwesome City Clubの音楽やミュージックビデオは生活を小粋に彩るアイテムとして抜群の演出効果をもたらす。

Awesome City Club - アウトサイダー (Music Video)

 代表曲「アウトサイダー」は2015年リリースの楽曲であるが、劇中では2018年の世界で流れることになる。麦と絹が出会った頃の2015年、そして関係性に変化が訪れる2018年。その2つの世界をつなぐ「アウトサイダー」は、この映画のカギとなる時間の不可逆さを伝える役割を果たしている。また、Awesome City Clubはこの映画の予告編などにインスパイアソングとして「勿忘」を提供。物語を回想するかのような歌詞をドラマチックなメロディで届ける、映画の余韻に浸るにはうってつけの見事なバラードソングだ。

Awesome City Club / 勿忘 (MUSIC VIDEO)

 その他にもcero、羊文学、崎山蒼志、長谷川白紙といったミュージシャンの名前も登場し、麦と絹の嗜好を色濃く映し出す。単にオシャレで聴き心地が良いからであるとか、話題作りとしての選曲では決してない。麦と絹のキャラクターを強く印象づけるのはもちろんのこと、大切に思っているものとの向き合い方/大切にしたいことの変化、というこの作品の主題を描くためには誰もが知っているヒットソングではなく、個人の日常やささやかな青春の風景に息づく音楽である必要があったのだ(SMAPでも「たいせつ」に言及しているのが印象的)。ポップカルチャーを愛する者にとっては、むずがゆい気持ちや複雑な感情が渦巻く瞬間もきっと多いであろう本作。しかしだからこそポップカルチャーへの愛が際立ち、自分の大切なものを通じて誰かと心を通わせる喜びや儚さを再確認できる映画ではないだろうか。純度の高い恋愛映画でありながら、様々な意味を持って噛み締めることのできる点が多くの人の心を揺さぶっているのだと思う。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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■公開情報
『花束みたいな恋をした』
全国公開中
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人、瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ、押井守、Awesome City Club、PORIN、佐藤寛太、岡部たかし、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
脚本:坂元裕二
監督:土井裕泰
製作プロダクション:フィルムメイカーズ、リトルモア
配給:東京テアトル、リトルモア
製作:『花束みたいな恋をした』製作委員会
(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
公式サイト

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