Suchmos、立ち位置を更新し続ける野心に満ちた歩み 活動休止発表に寄せて

 2017年にはソニー・ミュージック内に設立した自主レーベル<F.C.L.S.>からメジャーデビュー。開拓者精神のままでさらに上のステージへ向かう。2018年の「VOLT-AGE」はFIFAワールドカップを含む同年の「NHKサッカーテーマ」として書き下ろされた。これまでの起用アーティストの楽曲とは全く違う、どっしりとしたテンポでふつふつと沸き立つ熱が表現されたこの曲は賛否両論を巻き起こすとともに、どんなオーダーであっても迎合することのない彼らのスタンスが貫かれているように思えた。同年、『第69回NHK紅白歌合戦』にも出場し、YONCEが「臭くて汚ねえライブハウスから来ました」と言い放った後に「VOLT-AGE」を爆音で届けた。彼らの出自と在り方を誇るようなパフォーマンスだった。

Suchmos 「VOLT-AGE」2018.11.25 Live at YOKOHAMA ARENA

 2019年3月の3rdアルバム『THE ANYMAL』におけるブルージーでサイケデリックなサウンドは流れを大きく変えた。まるで自分たち自身にもカウンターを打つような転換作である。ゆったりとしながら荘厳な響きを持つ長尺の楽曲たちは、聴いているとどこかに連れて行かれるような気分になる。YONCEの歌声にも悲しみが滲み、混沌とした時代への祈りのようだ。この作品を引っ提げた横浜スタジアムのライブで彼らは3万人を集めた。リスナーに媚びることなく道を切り拓いてきた歴史の成果を証明する夜となった。

Suchmos “In The Zoo” (Official Music Video)

 新曲を数多く披露した昨年7月の配信ライブから約半年後に活動休止を選択したSuchmos。結論に至るまでにどんな思いがあったのか、その全てを知ることは出来ないが、文面にあった“修行の時”というワードは救いだ。各々がスキルとセンスを一層尖らせた後にいつか集結することになるはず。そこで生まれる未知なる音楽で、また新たな道を開拓していくことだろう。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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