ずっと真夜中でいいのに。予想を裏切り続ける“無邪気で強い姿勢” テレビ初パフォーマンス『SONGS』で見せた実体の片鱗
そんなずとまよの好奇心旺盛さが思い切り発揮されているのが、「暗く黒く」だ。2段階のサビを持つ変則的な構成のこの曲は、まさしく川谷が言っていた「予測できないメロディ」そのもの。特に、〈連鎖よ続け〉の後からのサビの2段階目のパートが特に見どころだ。それまで比較的静かでしっとりしたメロディで進行していたが、テレビやオープンリールなどの「楽器」が一斉に鳴り出し、狂騒の空間に塗り替えていく。
集英社で『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』を担当してきた編集の高野健は、ずとまよの独特の言葉選びについて、「単語の組み合わせで新しさやリズムの良さを作ってるのが、作家さんに近い感覚なのかと思う」と分析する。
「あんまりわかってほしいと思ってやってないんじゃないかなと思いますね。ACAねさんにとっては完璧な歌詞で完璧な世界ができているのかもしれないけど、我々はその一部しか知らない」
確かに、ずとまよの言葉選びは独特だ。「暗く黒く」には〈だいじょばない〉という日本語を入れ込んでいたり、「秒針を噛む」も〈ハレタレイラ〉という、意味がありそうでわからない、けれどとにかく耳心地のよい語感の詞で締めくくられる。
「暗く黒く」が主題歌になっている映画『さんかく窓の外側は夜』に出演している志尊淳は、「自分の思っていることを言葉にできない人を自然と導いているような強さを感じていて。強要じゃなくて押し付けじゃなくて、さらっとしているけど強い意志が見えるのが特徴的なのかなと思います」と話す。
3曲目に披露された「正しくなれない」はまさしくそういう曲だ。
タイトルでまずハッとさせられる。正しい方がいいことはわかっていても、そうではいられない場面に、生きていれば必ず遭遇するものだ。きっと誰しもが感じたことのあるジレンマを「正しくなれない」という言葉がこれ以上なく的確に表している。その上で、全部を包むように〈僕らは何一つも/奪われてないから〉とかすかに震えながら歌い上げる様には確かに、切実さと意志の強さが感じられた。
最後に、10年後の展望を訊かれたACAねはこう答えた。
「10年経って、ずっと真夜中でいいのに。というバンド名がより恥ずかしく、その時によりいい曲が作れるような気がして。だからこの名前に縛られていきたいなと思いますし。恥ずかしさと自分を疑える気持ちで作っていけたら」
「恥ずかしくないように」「自分を信じて」ではない。予想と逆の言葉を選んでくるところにはやはり少し天邪鬼な部分が見え隠れするし、一見ネガティブな感情すらも呑み込んで燃料にしようとする姿勢からは途方もない強さを感じる。あらゆるものを取り込んで試行錯誤したずっと真夜中でいいのに。が5年後、10年後にどんな進化を見せるのか、恐ろしくも楽しみだ。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129)
■リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。2nd アルバム『ぐされ』
2月10日(水)リリース
<収録曲>
01. 胸の煙
02. 正しくなれない
03. お勉強しといてよ
04. 勘ぐれい
05. はゔぁ
06. 機械油
07. 暗く黒く
08. MILABO
09. ろんりねす
10. 繰り返す収穫
11. 過眠
12. 低血ボルト
13. 奥底に眠るルーツ
Bonus Track
暗く黒く [Twin Piano Live ver.]
<リリース形態>
“強”初回限定DELUXE盤(2CD+GOODS):¥9,000税抜
・本編全曲オフボーカル(インスト)CD付き
・にらちゃん(約15cm)&うにぐりくん(約5cm)特製フィギュア
・MVアート&ACAね一問一答や制作ノート切れ端コピーなどBOOK
・おもちゃ外箱パッケージ(中身は魔導書パッケージ仕様)
・ACAね直筆サイン入りポストカード(ランダム1000枚限定封入)
初回限定LIVE盤(1CD+Blu-ray):¥5,800税抜
・オンラインライブ『NIWA TO NIRA』2020.8.6 完全収録
・ACAね ASMRの旅 滝と焚火編
・魔導書パッケージ仕様
通常盤(1CD)¥3,000税抜