NAOKIさんが日本のハードコアパンクシーンの中で教えてくれた、愛のある世界の素晴らしさ ISHIYAが綴る追悼文

 そうした普段の楽しい姿とステージでのギャップも新鮮で、唯一無二と言えるNAOKIさんのオリジナルなギター奏法に影響を受けた人間が、この世界には無数に存在する。

 THE COMES時代のギターもかなり素晴らしいが、ハードロックやロックンロールが好きだったNAOKIさんの独特なフレーズは、ギターソロを聴けば一発で「あ! NAOKIさんだ」とわかるもので、その奏法はLIP CREAM時代に昇華されたのではないかと思っている。

 ステージングも素晴らしくカッコよく、ブンブンと腕を振り回しながら弾く姿と、NAOKI節が炸裂するライブは常に緊張感に溢れ、心底痺れてしまうライブばかりだった。

 普段は柔和でギャグの塊のような人であり、決して自ら揉め事を起こすような人ではなかったが、一旦揉め事となると一歩も引かず、その芯の強さを垣間見たときには、改めてNAOKIさんという人間の表には現れない心の奥深さに触れた気がした。

 貧乏で暇だった俺や友人たちを、いつも快く迎え入れてくれ、いつも大笑いしながら朝まで一緒に遊んだり、飯を食わせてもらったりと、楽しい思い出しかない。普通世話になった先輩や仲の良い友人でも、嫌なことのひとつやふたつはあるものだが、個人的にNAOKIさんにはそれがない。それほど後輩にとっては優しく面白く、面倒見のいい先輩だったと思う。

 LIP CREAM解散後に、THE COMES、GASTUNKのドラムであったMATSUMURA氏と一時やっていたNOというバンドの企画にも呼んでもらい、一緒にライブもやったが、その後NAOKIさんは表舞台からは退きながらも音楽活動をしていたと聞く。

 オジー・オズボーンとMotörheadが来日した際の、さいたまスーパーアリーナのイベントで久々にNAOKIさんと会ったが、そのときも相変わらず一緒に大笑いし、LIP CREAMが復活するあたりの時期には、久々に家にも遊びに行くなどして話していると「NAOKIさん全然変わんねぇ」と、びっくりして笑いながらも、非常に嬉しい思いだった。

 しかし実は、その頃も体調はよくなかったらしく、LIP CREAMが復活するということで、俺には昔となんら変わらない姿を見せて安心させてくれたのかもしれない。

 その後年に1、2度会う機会があったが、体調はあまり思わしくなかったようで、酒を飲むこともしなくなっていた。

 ここ10年ほどだと思うが、友人や先輩が死んでも涙が流れることのなかった俺は、友人の死があまりにも多いせいか「もう友人の死では涙を流すこともない、感情を失った人間になってしまったのではないか?」と、忸怩たる思いでいた。しかしMINORU君からNAOKIさん死去の一報を聞いたあと、夜には涙が止まらなくなり号泣してしまった。耐えられずに友人に電話してやっと少し落ち着いたが、未明に気を失うように眠るまで涙が止まることはなかった。

 遊びに行った時に、みかんやチョコが入った手作り餃子が振舞われ、最終的には中にティッシュが入っているような仕込みまでしていて、みんなでゲラゲラ笑った日を思い出す。

 一緒にツアーに行ったときや家に泊まったときに、寝る前に必ず始まるギャグが忘れられない。

 あの顔で笑うNAOKIさんと会えないなんて信じられない。

 あんなに楽しくて優しくて、カッコイイギターを弾く人がいなくなったなんて信じたくない……。

 NAOKIさん。また一緒にバカやって腹抱えて笑いたいです。またステージでギターを弾いてる姿が観たいです。またホラばっかり吹いて笑わせてほしいです。どうせまだ、仕込みのネタがあるんでしょ? お願いだから、もう一度でいいから、あの笑顔で笑ってる姿を見せてください……。

 NAOKIさん。あなたが伝えてくれた愛は、俺の中では絶対的なものであり、俺の心にこびりついて忘れようがありません。楽しくて大笑いしながら、愛のある世界の素晴らしさを教えてくれてありがとうございました。

 一緒にライブができたことや、ツアーに連れて行ってくれたこと、一緒に遊んだことやバンドができたことは、俺の人生の宝物です。

 今頃彼女さんとも会えて、また一緒に仲良くやってるんですよね。また会えてよかったですね。また遊びに行くので、そのときまで少しの間寂しいですけど頑張ります。俺たちがやることを、ゲラゲラ笑いながら観ていてください。

 あの恐ろしくて凄惨なハードコアパンクの世界で、あなたは面白すぎました。そのおおらかで優しい楽しさと音楽に対する真摯な姿勢、あなたのギタープレイはみんなの心に永遠に刻まれ、影響を与え続けていきます。あなたのことは、絶対に忘れることなどありません。

 NAOKIさん、どうぞ安らかに。心からの冥福をお祈りいたします。本当にありがとうございました。合掌。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。2021年1月、自身の体験をもとにシーンの30年史を綴った書籍『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』(blueprint)を刊行。FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる