アイドルはもう「結婚=引退」ではない Negicco全メンバー結婚から考える、現代の多様な可能性
「アイドルはいつかいなくなる存在」ではなくなった?
朝井リョウの小説『武道館』(2015年)で、主人公のアイドルの感情を綴ったこんな一文がある。
アイドルが恋をしてはいけないということは、私が生まれるずっと前に、知らない誰かが決めたことだ。(中略)自分ではない誰かが決めたことを、まるで自分たちが決めたことのように、何の抵抗もなくそのまま甘受してきたのだ。
大手事務所の恋愛ルールに追随したり、それを基準にしたりする考え方。アイドルはファンにとって疑似恋愛の相手でもあり、それがビジネスにも結びつくこと。ライブアイドルのように動員数や売上などの数字がステップアップにつながり、自分のことを本気で好きになってくれる人を増やした方が、メリットが大きいこと。いろんな理由が挙げられる。でもすべてがはっきりとした答えになっているわけでもない。まさに『武道館』で語られたこと、そのものだ。
だからこそ、Negiccoや古川未鈴のように新しい選択肢を作ったことは、重要なポイントなのだ。そもそも社会全体として、結婚、出産をしても女性が安心して仕事を続けられる環境づくりが進んでいるなか、アイドルを職業として考えるのであれば、そういった世の中の動きを無視するわけにはいかない。取り組むべき課題だ。
筆者はNegiccoのNao☆が結婚を発表した時期、バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIをインタビューしたのだが、メンバーの鈴姫みさこの言葉が印象的だった。
“今まで当たり前のように「アイドルはいつかいなくなる存在」と言われていたけど、そうではなく、アイドルのままで生涯を終えても良いのではないか。私たちが、アイドルらしさというものに縛られ過ぎていたのかもしれない。アイドル像そのものが時代のなかで大きく変化している。結婚してもアイドルを続けても良いと思う。アイドルとしての人生のあり方を考えるようになった”(参照)
アイドルはこれまで刹那的な仕事として捉えられてきた。でもミュージシャンや役者のように、アイドルも一生涯の芸能仕事である場合、「結婚=引退」ではなく「それでもアイドルとして自分の人生を全うする」という考え方がもっと認められても良いのかもしれない。