アイドルはもう「結婚=引退」ではない Negicco全メンバー結婚から考える、現代の多様な可能性

 2020年12月23日、アイドル界におめでたいニュースが飛び込んできた。新潟を拠点に活動するグループ、Negiccoのメンバーであるkaedeが結婚を発表した。Negiccoといえば2019年4月にNao☆、2020年6月にMeguが結婚を報告。ともに結婚後もアイドルを続けており、kaedeも同様にこれからも変わらず活動する。

Negicco『午前0時のシンパシー』
Negicco『午前0時のシンパシー』

 でんぱ組.incの古川未鈴も2019年9月、結婚を発表。2020年1月1日にオンエアされたラジオ番組『ミューコミプラス』(ニッポン放送)で古川は、でんぱ組.incの曲「WWDBEST」の〈業界ルールも変えたるけん〉という歌詞を引き合いに出しながら自身の結婚を語り、同番組の吉田尚記アナウンサーも「結婚をアリと言えるようになったことが、アイドル現場の進化を感じる」と相槌を打った。

 古川は2021年1月、第一子妊娠も報告した。子育てをしながらアイドルとして活動する、いわゆる「ママドル」の道を歩むと見られる。ちなみに「ママドル」と言えば松田聖子が代表格。聖子は妊娠中にもアルバム『SUPREME』(1986年)をリリースし、以降もアイドルとして第一線で活躍した。

 Negiccoの「全員既婚者」という構成は、日本の女性アイドルグループとして確かに異色的。だけどそれも十分、グループの個性になるのではないか。古川未鈴も、母親としてどのようなアイドル像を築いていくのか期待大だ。「結婚発表」に踏み切った各自の決断や勇気もさることながら、事務所関係者ら周辺の理解も素晴らしいと感じた。Negicco、古川未鈴、その関係者たちは現在の日本の女性アイドルたちにさまざまな可能性を投じた。

 過去にはいくつか前例があった。女性アイドルでは先述した松田聖子が、デビュー5年目の1985年4月に俳優・神田正輝と婚約。同年6月には華やかな披露宴がテレビで放映された。男性アイドルの結婚は、2000年のSMAP・木村拓哉、2019年の嵐・二宮和也らが思い浮かぶ。もちろんいずれも、落胆の声は多かった。「アイドルの結婚」について賛否の意見が交わされた。発表の仕方、時期などいろんな事情が、ファンの感情とマッチしない場合がある。それでも大半の場合「応援しよう」という動きの方が膨らむように感じられる。Negicco、古川未鈴の結婚発表時も、ファンはSNSを通じて祝福の言葉をたくさん投げかけた。

 実際、筆者も少数ながら既婚者の女性アイドルを知っている。「内密にできるなら恋愛OK」というスタンスのアイドル運営も多い。昭和の頃から「アイドルは恋愛御法度」と言われているが、ファンの間でも、たとえアイドルに恋人がいても「バレないようにしてくれたら」、「最後までうまく騙してくれるなら」という割り切りも確かにある。

 松浦亜弥の場合は15歳の頃から12年間、一途な愛を静かに育んで2013年8月にゴールインした。捉え方は人それぞれだが、情報が漏れなかった点はプロのアイドルに徹していて見事だと筆者は考えている(「プロのアイドルはそもそも恋愛しない」という考えの人もいるだろうけど)。「恋人がいるんじゃないか」と薄々勘づいていても、楽曲性、パフォーマンス、コンセプトを第一に楽しむタイプのファンは、そういったことに暗黙の了解的な気持ちがある。

 とは言ってもやっぱり、プライベートの恋愛や結婚を公表するのは躊躇われるのが現実。それらが当たり前のムーブになるには、かなり時間はかかりそうだ。

 その要因として、現在のアイドルシーンのトップクラスの恋愛対応が一つにあるだろう。AKB48などの48グループは、恋愛が発覚したメンバーに対して幾度となく処分を課してきた。ハロプロ系は、モーニング娘。の藤本美貴の熱愛発覚によるグループ脱退もあり、恋愛禁止が噂されていた。ほかの大手事務所も明言はされていないものの、トラブル防止や意思統一も兼ねて恋愛に対する何らかのルールを設けている。そういったペナルティが芸能ニュースなどで大々的に報じられ、時に見せしめのように映ることもあり、「アイドルが恋をするのはいけないこと」という意識の根付けが強くなって、アイドルの恋愛への過敏化につながった可能性がある。

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