花守ゆみり、東山奈央、高橋李依……『ゆるキャン△』で見せる女性声優たちの好演 視聴者の心潤す、それぞれの表現に注目
原紗友里、高橋李依らキャラクターの魅力引き立てる芝居
一方で、本作におけるトリックスター的な存在として大事なピースとなっていたのが、大垣千明を演じた原紗友里。突き抜ける太陽のような明るさを発揮し、期待に違わずフルスイングを続けてくれた。しかし彼女もただの“元気な子”にはとどまらず、締めるところはきっちり締める。特になでしこに対するセリフにおいては面倒見のよさがにじむ場面もあり、普段のはっちゃけ具合とのコントラストによって、要所においてその要素がより印象深く胸に残る。メリハリつけた芝居が、千明というキャラクターの魅力をより引き立たせているのだ。
また、犬山あおいを演じる豊崎愛生も原とは違った意味で、非常に大事なピースとして機能。あおいは作中におけるツッコミポジションながら、声質のみならず口調ものんびり。ともすれば、ツッコミが流れてしまいかねない場面でも、彼女のツッコミはしっかり“刺さる”。だがそれは決して刺々しいものではなく、いちばん入ってきてほしいタイミングに的確なテンションでインサートしてくるものなのだ。また軽いホラを吹くときの“平然さ”など、目立たずとも彼女のセリフ回しが効果的に利いているポイントも多く、作品の空気感づくりに大いに寄与していると言っていいだろう。
そして斉藤恵那を演じた高橋李依は、“食えなさ”のさじ加減が絶妙であった。高橋のキャラクターで“食えない”と言うと、同時期に1期が放送されていた『からかい上手の高木さん』での高木さんと重なるように感じるかもしれない。だが、小悪魔的な要素を随所ににじませていた高木さんに対し、恵那の根源にあるのはマイペースさ。つまり、より飄々としながらも自然に感情の起伏も見せることで差別化に成功していた。そのうえで含ませ方自体も、本当に「何を考えているのかわからない」と受け手に思わせるようなあやふやなものではない。受け手の感度によって感じる深さこそ変わるかもしれないが、伝えたい感情や大事な意味合いは齟齬なく受け手に届くもの。恵那像の構築に大きな役割を果たした、狙ってぼやかすことができるという繊細さは、SEASON 2でも注目してみてほしい。
SEASON 2からは新キャラ・土岐綾乃も登場。綾乃を演じる黒沢ともよも演技力には定評がある声優だ。彼女が加わることで新しい風が吹き込まれつつも、変わらず『ゆるキャン△』の世界観が毎週私たちの心を潤してくれると、改めて期待したい。
■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。