ミスチル、セカオワ、King Gnu、back number……人気と実力兼ね備えたバンド勢揃いのドラマ主題歌 音楽性や傾向を探る

King Gnu「三文小説」(日本テレビ系ドラマ『35歳の少女』主題歌)

King Gnu『三文小説 / 千両役者』
King Gnu『三文小説 / 千両役者』

 10歳の時に不慮の事故で長い眠りにつき、25年ぶりに目覚めた主人公を柴咲コウが演じる『35歳の少女』。『家政婦のミタ』などで知られる遊川和彦が脚本を手がけ、心は10歳、体は35歳の主人公・時岡望美の葛藤や苦悩、成長を描いている。今回は、ドラマのプロデューサーがKing Gnuに主題歌をオファーし、両者のタッグが実現。リーダーの常田大希が台本を読み込み、ドラマサイドとディスカッションを重ねた上で作詞・作曲をし、「三文小説」が完成した。歳を重ねることや人間の弱さを受け入れる人生讃歌であり、重厚なスケール感をたたえた楽曲に仕上がっている。本編のエンディングでは、望美(柴咲)の顔のアップの映像にボーカル・井口理のファルセットボイスが重なり、〈そのままの君で良いんだよ 増えた皺の数を隣で数えながら〉と望美に静かに語りかけるようなイメージの作りになっている。特異な設定を加味しつつ、ドラマプロデューサーからの「絶望している主人公に神から降臨したような…魂を揺さぶるような、これまでのKing Gnuのイメージを壊すような」(参照:ドラマ公式サイト)というリクエストに見事に応える形となった。

King Gnu – 三文小説

back number「エメラルド」(TBS系日曜劇場『危険なビーナス』主題歌)

back number『エメラルド』
back number『エメラルド』

 東野圭吾の原作をドラマ化した『危険なビーナス』は、主人公の獣医師・手島伯朗(妻夫木聡)が、弟の妻を名乗る謎の女性・矢神楓(吉高由里子)と共に30億円もの名家の遺産をめぐる謎に迫っていくラブサスペンス。主題歌として、back numberが新曲「エメラルド」を書き下ろした。彼らが主題歌を担当するのは、2019年1月期のTBS系ドラマ『初めて恋をした日に読む話』の「HAPPY BIRTHDAY」以来。それまでのback numberの十八番である“ちょっと女々しい男心を吐露するラブソング”から一転、危なげで妖しい男女の恋愛を想起させるナンバーになっている。イントロのギターのディスコード感と歪んだサウンドは、不穏なムードを醸し出し、艶めかしい詞世界は、危険でミステリアスな女性だからこそ惹かれてしまう男性の心理をあぶり出す。そんな楽曲の世界観は、主人公が不思議な魅力を放つ美女に翻弄され、一族の遺産相続争いに巻き込まれていくドラマの展開ともオーバーラップし、物語をスリリングに盛り上げている。

back number – エメラルド (TBS系 日曜劇場『危険なビーナス』主題歌)

 今回紹介した主題歌4曲は、全てがドラマのための書き下ろし楽曲。その中で、Mr.ChildrenとSEKAI NO OWARIは、普遍的なメッセージやシチュエーションをベースとしたバンドとしての王道を、King Gnuとback numberは、コンセプチュアルなドラマのプロットを原案に新機軸を打ち出した。いずれも、物語や登場人物のキャラクターに導かれ、音楽的ポテンシャルや魅力が引き出されたといえる。今後も、ドラマとアーティストの奇跡の化学反応にぜひ期待したい。

■水白京
音楽・映像ソフトの制作・販売会社を経て、音楽ライターに。J-POPを中心にインタビュー、ライブレポート、 コラムなどの原稿執筆を行っている。主な執筆媒体は「リアルサウンド」「MANTANWEB」「オリコン」など。

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