TikTokで話題の「Mad at Disney」バイラルチャート上位に キャッチーな音と痛烈な歌詞で描かれた“現実とロマンスの間”
参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(9月10日公開:9月3日~9月9日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:川崎鷹也「魔法の絨毯」
2位:もさを。「ぎゅっと。」
3位:salem ilese「Mad at Disney」
4位:オレンジスパイニクラブ「キンモクセイ」
5位:Kanaria「KING」
6位:米津玄師「感電」
7位:理芽「食虫植物」
8位:BLOOM VASE「CHILDAYS」
9位:ズーカラデル「夢の恋人」
10位:Vaundy「不可幸力」
希望に満ちた夢の国。そんな場所は本当に存在するのだろうか。皮肉たっぷりにそんな疑問を投げかけた楽曲がTikTokを中心に世界中で大ヒットしている。その楽曲は輝かしい夢や希望、そして真実の愛への疑念と怒りを吐露した「Mad at Disney」である。「Mad at Disney」はアメリカのシンガーソングライター、salem ileseによる楽曲で2020年7月にオリジナルバージョンがTikTokで公開されて以来、SNS上の口コミで人気が全世界に広がっている。TikTokで「Mad at Disney」が使われた動画は早くも100万本以上にのぼり、リップシンク動画を中心にすでにミーム化している。
この楽曲の最大の特徴は、キャッチーな音像とは裏腹にその歌詞が痛烈な内容であることだ。曲名の「Mad at Disney」=「ディズニーへの怒り」が表すように、全編を通してディズニー的思想へのアンチテーゼを唱えている。
冒頭から〈I'm mad at Disney, Disney/They tricked me, tricked me〉(私はディズニーに対して怒っているの/彼らは私を騙した)と衝撃的な言葉で幕を開け、〈Had me wishing on a shooting star/But now I’m twenty something/I still know nothing about who I am or what I’m not 〉(流れ星に願いをかけたりしたけど、20歳になってまだ自分が何者なのかもわからない)と続く。よく聴くと〈Had me wishing on a shooting star〉の部分ではピノキオの劇中歌である「星に願いを」のメロディをなぞっており、より皮肉さを引き立てていることがわかる。明確な使命をもって生まれたディズニーキャラクターと比較すると生身の人間は「自分は何者なのだろうか」という命題に悩まされ続け、納得できる回答にたどり着ける者はほんの一握りだろう。このように序盤ではディズニー的人生観と実際直面している現実との乖離について語られ、次第に「愛」についての疑問へ展開していく。