怒髪天、“3密回避”で行われた日比谷野音公演徹底レポ 有観客での本格的再始動へ大きな意味を持つライブに
「コロナ(禍)になって良かったこと? ないよ、あるわけないじゃん」
テレビなどに出て、落ち着いて現況に向き合っている、と言っているバンドマンはあくまで一部であり、自分たちをはじめ、多くのバンドマンがそうではないということ。自分たちはあくまで“ロック”をやっているのであり、それは文化芸術というほど立派なものではないということ。この日常が日常で無くなってしまった生活に対し、誰もが言いたくても言えないようなことを包み隠さず、口にしていく増子。
「正しいリーダーであって欲しい、なんていうけど……俺たちは、君たちの悪い友達だよ。ロックバンドなんてのは、親に「あの子と遊ぶんじゃない」と言われる側の人間なんだから」
個人的見解と前置きしながら、「自分は身銭を切ってでも活動していきたい、人に頼ってなんでもかんでもクラウドファンディングをやればいいというわけではない」と持論を掲げ、「バイトはもうこの歳じゃダメだろうけど、俺は何やってでもバンドやるから。やめる理由がない!」と、状況がどうであれ何がなんでもバンドを続けていくという増子の覚悟に、大きな拍手が巻き起こった。
雨は降っていないが星は見えない。星は見えずとも、“王子”つながりで上原子の奏でるTHE ALFEE「星空のディスタンス」のリフで始まった「欠けたパーツの唄」。そして、このご時世、みんなの心に深く届いた「孤独のエール」。続けて「孤独くらぶ」では上原子の強くも優しいストロークに乗せて、〈さぁ オレタチは唄おうゼ「此処で生きてやるんだ!」と〉と噛みしめるように歌った増子は歌い終えたあと、「自分の作ったいろんな歌が今の状況に当てはまる」と口にした。
「リハの時に顔見知りのスタッフが動いている、いつもであれば当たり前の光景がキラキラ見えたんですよね。素敵な世界なんだ、ライブって。ライブというものがなくならなくて本当に良かったな」(上原子)
「たくさん来てくれてありがとう。窮屈な思いもあるけど、俺の信条は、何時如何なる状況でも自分が一番楽しむこと。だからみんなも誰よりも一番楽しんで帰ってください!」(清水)
「野音でぎゃおーん! やっててよかったー!」(坂詰)
各メンバーがそれぞれの想いの丈を述べる。「曲やると終わっちゃうもんね……いいなぁ、ライブいいよ、バンド最高」と増子が名残惜しそうに始まったラストスパートは「ポポポ!」に始まり、「酒燃料爆進曲」ではダミ声も高らかに坂詰の「ネバーダイッ!!(Never Die!!)」が野音の夜と我々の心に大きく響いた。そのまま騒々しく「タイムリッチマン」で本編が終了した。
「生きてまた会おうぜ!」この言葉が早く軽い気持ちで言えるように
アンコールの手拍子に誘われ、再び現れた増子からフィルムギグの告知と、ニューアルバム『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』が11月11日にリリースされることが告知された。そのタイトル曲である「H.M.A.」を初披露。ずっしりとしたリズムと和情緒を感じる重厚なメロディは、どこをどう聴いても怒髪天節全開なのだが、なんだか新しい息吹を感じるような不思議な曲だった。
最後の最後は「雪割り桜」。声は出せないが、増子の「オイ!オイ!」という声とともに、会場一体となって皆が拳を突き上げ、心の中で大いに歌った。その歌声は確実に野音いっぱいに轟いていた。
「命は賭けるけど、失うつもりはないからな。まだまだやれることあるぞ」
「この言葉が早く軽い気持ちで言えるようになりますように、……生きてまた会おうぜ!」
増子が深々と長くお辞儀をする中、まるで別れを惜しむ涙のような雨が降り出した。会場に『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』からの新曲「SADAMETIC 20/20」が爆音で鳴らされる。MCで「信じられないくらいほどスケールのバカでかい曲」と言っていたこの楽曲は、泣きのギターリフに重戦車のようなリズム、大らかで屈強なメロディ、そして地球規模、いや宇宙規模ともいうべき歌詞も相まって、SF映画並みに描かれる壮大なスケール感だ。とんでもない曲が誕生した。楽曲展開が後半に差し掛かり荘厳さを極めていてくと、雨脚も次第に強まり、曲が終わり完全に終演を迎えるといつしか土砂降りになっていた。それは公演中、雨が降らなかったことが奇跡と思えるほどだった。まるで、公演中は怒髪天とオーディエンスが雨を押さえつけていたようにも思えた。
声が出せず、なんともやりきれない気分になったところもあったが、しっかりと通じ合い触れ合うことができた、「今出来ることをやっていく」という怒髪天らしいライブだった。彼らはいつもそうだ。強要も説教もせずに、ただ出来ることを楽しんでやっている。その姿を見て、我々リスナーはなんだか元気や勇気を得るのである。彼らはコロナ禍になって良かったことはないと言っていたが、ライブの楽しさ、怒髪天というバンドの懐のドデカさをあらためて知れたことは、我々にとってみれば良いことだったように思えてならない。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter
■ツアー情報
『怒髪天 爆音上映会&トークTOUR 2020 "4人いてライブせんのか~い!"』
11月7日(土) 博多百年蔵 昼の部 開場/15:00 開演/15:30 終了予定/17:30
11月7日(土) 博多百年蔵 夜の部 開場/18:30 開演/19:00 終了予定/21:00
11月11日(水) 渋谷CLUB QUATTRO 開場/18:50 開演/19:30 終了予定/21:30
11月14日(土) 仙台Rensa 昼の部 開場/15:00 開演/15:30 終了予定/17:30
11月14日(土) 仙台Rensa 夜の部 開場/18:30 開演/ 19:00 終了予定/21:00
11月21日(土) 札幌ベッシーホール 昼の部 開場/15:00 開演/ 15:30 終了予定/17:30
11月21日(土) 札幌ベッシーホール 夜の部 開場/18:30 開演/ 19:00 終了予定/21:00
11月28日(土) 名古屋CLUB UPSET 昼の部 開場/15:00 開演/ 15:30 終了予定/17:30
11月28日(土) 名古屋CLUB UPSET 夜の部 開場/18:30 開演/ 19:00 終了予定/21:00
11月29日(日) 堺FANDANGO 昼の部 開場/15:00 開演/ 15:30終了予定/17:30
11月29日(日) 堺FANDANGO 夜の部 開場/18:30 開演/ 19:00 終了予定/21:00
チケット料金
渋谷CLUB QUATTRO公演:指定席¥3,800-(税込)※別途ドリンク代
他公演:全自由(前売)¥3,800-(税込)※別途ドリンク代
■ライブ情報
『2020年10月20日(ハツハツドハツ)の日特別公演
妄想音楽番組 ~HEY!HEY!僕らのSONGSステーション~』
浅草花劇場から生配信
詳細は後日発表
■リリース情報
アーティスト:怒髪天
『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』
発売日:2020年11月11日(水)
初回限定盤 ¥4,000+税 TECI-1708 (CD+DVD)
通常盤¥3,000+税 TECI-1709 (CD)
<CD収録曲>
01. SADAMETIC 20/20
02. 駄反抗王
03. 孤独のエール
04. ポポポ!
05. スキモノマニア
06. や・め・と・き・な
07. 憎まれっ子のブーガルー
08. ヘイ!Mr.ジョーク
09. タイムリッチマン
10. H.M.A.
初回盤DVD内容
2020年7月26日(日)に京都磔磔で行われた配信ライブ「怒髪天 delivery 響都ノ宴"カラダ立ち入り禁止。第一回、タマシイ限定ライブ。カモン!俺達界隈(魂のみ)。”」のライブ映像全曲分を再編集して収録。
<DVD収録曲>
01. 酒燃料爆進曲
02. 欠けたパーツの唄
03. HONKAI
04. セイノワ
05. ポポポ!
06. ロクでナシ
07. 北風に吠えろ!
08. せかいをてきに…
09. GREAT NUMBER
10. NINKYO-BEAT
11. スキモノマニア
12. シン・ジダイ
13. クソったれのテーマ
14. ド真ん中節
15. 孤独のエール
16. 喰うために働いて生きるために唄え!
17. 歩きつづけるかぎり
18. オトナノススメ
19. 雪割り桜