松尾太陽が語る、ソロ活動への覚悟と挑戦 「もっと貪欲に生きていく必要があると思った」

松尾太陽が語る、ソロ活動への覚悟

実際に動き出すと、どんどん目標が出てくる 

ーーこのまま1曲ずつお伺いしたいと思います。大塚さんによるアーバンなファンクに続いては、堂島孝平&浅田信一によるディスコティークなサマーチューン「The Brand New Day」が収録されています。

松尾:まさか、タッグを組んでやっていただけるって思ってなかったんですよ。そんな、すごいお二方が作ってくださった曲が、僕のど真ん中! 大好きだし、どタイプの曲だったんです。だから、この曲に関しては、何の迷いもなく、すぐに出てきました。一発で、こういう歌い方しよ! って。

ーーどんな歌い方と言えばいいですか。

松尾:自分の親世代と今の僕ら世代の合体というか。ドライブにもぴったりだと思うし、早くライブでも歌いたいです。何よりも歌詞が好きなんですよ。歌い出しの〈真夏の桟橋駆け抜けたら〉なんて、たとえ、自分が見たことのない景色だとしても、目の前にパッと情景が浮かぶじゃないですか。これはまさに、作詞をするにあたって一番大事なことなんだなって感じましたし、とても勉強になりました。歌詞を見ているだけで。小説を読んでいるような気持ちになるから。

ーー松本隆メソッドですよね。最初に情景描写があって、ストーリーが展開していくっていう。

松尾:そういう歌詞が好きなんです。松田聖子さんの「赤いスイートピー」の一発目なんて、〈春色の汽車に乗って海に連れてってよ〉ですからね。すごいですよね。季節感もあるし。風景感もある。

ーーあははは。23歳の若者と話してるとは思えなくなりますが、3曲目の「掌」は自作曲で、まさに情景描写に優れた歌詞になってますね。

松尾:これは自粛の期間を通して歌詞をブラッシュアップしたんですけど、超特急のオフィシャルグッズとして販売している生写真に幼少期の写真を使うことになって。手元にはないので、実家の母に連絡して送ってもらって。いろんな写真を見返していた時に昔のことを思い出したりしていたんですね。昔のことを振り返っている時にパッと思いついたことを、手紙を書くように書いていって。一番最初に出てきたのが〈夜行バスの窓から/いつも見てる景色〉っていう始まりでしたね。

ーー風景が見えますよね。地元の大阪から東京に向かうバスが動き出してる。

松尾:そうですね。高校3年間、週末は夜行バスで上京していて。休日は東京にいて、平日は大阪に戻って学校に行ってという生活を3年間していたので、その記憶が濃くて。僕、基本的には表の自分と心の中にいるもう一人の自分がいて。心の中にいるもう一人の自分がいつも励ましてくれているんですね。自分が顔を落とした時に、大丈夫だからって言い聞かせて、励ましてくれる。そのおかげで前を向いていけるし、決意も持って、成長していくこともできる。そんな自分の経験を書くことで、今、思ったように前に進めない人とか、身動きがとれなくなっている人とか、自分には向いてないんじゃないかってあきらめかけている人とか。そういった気持ちを持っている方に聴いてもらいたいなという想いも込めていますね。

ーー超特急にはあまりない内省的な歌詞ですよね。

松尾:超特急とは曲の世界観が違いますし、言ってしまえば、超特急の自分は表の顔で歌っているんですね。自分の中にはいくつも人格があるし、曲よってキャラクターも変わっていくけど、松尾太陽は内面で、中身勝負で行こうと決めているんです。だから、より人間的な歌詞が多かったりするんですけど、それも超特急とは違う側面の1つとして楽しんでもらえたら嬉しいなと思いますね。雑誌で言うと、表表紙と裏表紙みたいな感じです。

ーーわかりやすい例えです(笑)。そして、リード曲「Sorrow」は現役大学生で弱冠20歳の新生マルチアーティスト、Vaundyさんとのコラボです。

松尾:これまでは年上の方とご一緒することが圧倒的に多かったので、また違った方向からの新鮮味もありましたし、ここにきて、「令和になったな!」っていう感覚になりましたね(笑)。次世代が活躍している楽しさと、半端ないほどの刺激を受けました。歌っていて楽しいし、気持ちいいし。

ーーキーは高いけど楽しいんですね。最初に受け取った時はどう感じました?

松尾:曲名だけ見たときは、しっとり系かなって思ったんですけど、曲を聴いたらすごく爽やかで、清涼感があって、いい曲だなって思ったんですね。そのあと、歌入れの前に楽器録りのレコーディングにも行かせてもらって。その時に初対面だったんですけど、レコーディングに入る前に、曲に対する注意事項とかリクエストを事前に聞けたので。当日の歌入れはスムーズにできたんじゃないかなっていう印象ですね。

ーーどんなディレクションがありましたか。

松尾:基本的には技術的なことです。ブレスの位置とか、Dメロは「一個一個を歌い捨てていってください」とか。歌い方としては、「mellow P.」とは真逆ですね。人によってディレクションが違うし、楽曲の世界観に合わせてそれぞれの何通りかの自分を構築することもできるから面白いですね。

ーー続いて、She Her Her Hersが90’S R&B「libra」とiTunes特典のアーバンソウル「RE」の2曲を提供しています。オルタナロックバンドというイメージだったので意外でした。

松尾:正直、僕も意外でした。She Her Her Hersさん、本当に面白かったですね。まず、「libra」は、規則的なシャッフルリズムの中に、突然、ハイハットが入ってきて、そこにアクセントをつけたりとか。決まりがある中でもトリッキーなものがたくさんあったなって思いましたし、歌詞も目を瞑った時に夜空がすぐに浮かんできて。僕、自分じゃない自分になれる曲も大好きなんです。浮世離れしているキャラクターになるのが好きなので、「mellow P.」と同じくらい浮世離れした自分に出会えて、すごく好きだなと思いました。

ーーもう1曲の「RE」はどんな情景を思い浮かべましたか。

松尾:ノイズの入った世界なんだけど、その向こうにはすごく色鮮やかな世界観とか、ノスタルジックな色が出てくる。そういった映像を見た時って、変な、不思議な気持ちになったりするじゃないですか。それと同じような感覚で、ちょっといい意味の違和感を残した曲でもあったんですよ。She Her Her Hersさんも同じことをおっしゃられていて。「芸術映画を見ている時の感覚でこの曲の世界を生きてくれたら嬉しい」って言っていただいたので、僕的には思いつきやすかったですね。

ーーそして、ラストナンバーが「Hello」というタイトルで。

松尾:ライブでも本編ラストか、アンコールの最後に歌いたいなって思っています。明るく終わろうという感じですね。邦楽と洋楽のミックスで、アコースティック調なので、いろんなシーンで聴けると思います。家の中でもいいし、外でもいいし、個人的には、ゆっくりしてお茶でも飲んでいる時でも合う曲だなと思いますね。

ーー全曲完成して、ご自身にとってはどんな作品になりましたか。

松尾:僕的には自画自賛していこうと思ってまして(笑)。本当に素敵な1枚になったなと思います。1stミニアルバムにしては、本当にこんなに豪華でいいのかなと思うくらいたくさんの方が関わってくださいましたし、その中に自分で作った曲を入れられたことにすごく感謝しています。僕は早く世の中に出したいなという気持ちですし、たくさんの方に聞いてもらいたいなと思っています。初見の方とか、音楽好きな方に本当に聞いてもらいたい。その上で、感想も聞かせてほしいですね。皆さんの反応もすごく楽しみです。

ーー最後にソロのボーカリストとしての今後の目標を聞かせてください。

松尾:今回、音楽チームの皆さんとも制作面において、以前よりも踏み込んだ話をすることが増えたんですね。もっと深く関わっていきたいなと思うし、YouTubeチャンネルも途切れずにやっていきたいです。

ーーあれはなぜアカペラだったんですか?

松尾:一番わかりやすいからですね。音を流すこともできるし、曲を聴きながら歌うこともできるんですけど、自分の今の実力と等身大の自分を露骨に出るアカペラにしようと思って。コメント欄によく「リズムが速くなってる」って書いてもらってるんですけど、自分では歌ってる時に気づけてないんですよね。他者から言われて気づく部分もあるし、教えてもらえることは成長につながるから嬉しいし。そうやって、今後もいろいろと挑戦していきたいと思います。何よりも、ライブがやりたいっていう気持ちがあるんですけど、大きな目標で言うと、単独ライブの他に全国ツアーもしたいし、シングルやアルバムも出していきたいし、いずれかは、作詞作曲のクレジットを自分の名前で埋め尽くしたいなと思いますし……。実際に動き出すと、どんどん目標が出てくるものですね。その1つずつを確実に、地道に達成していけたらなと思います。

松尾太陽『うたうたい』

■リリース情報
『うたうたい』
発売:2020年9月2日(水)
価格:¥2,530(税込)
【収録曲】 M1: mellow.P / M2: The Brand New Way/ M3: 掌 / M4: Sorrow / M5: libra / M6: Hello

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