vivid undress、紆余曲折なキャリアがもたらす音楽の説得力 コンプレックスを肯定した最新作を読み解く

vivid undressの音楽の説得力

 昨年12月にメジャーデビューを果たしたvivid undressが、8月19日にミニアルバム『変身コンプレックス』をリリースする。本稿では、まだメジャーのフィールドでは新人バンドであるvivid undressの魅力を、『変身コンプレックス』という作品をベースにしながら紐解いてみたい。

 vivid undressは、メジャーバンドとしてはまだ1年目の新人であるが、バンドとしてのキャリアはすでに6年目に突入している。また、元々メンバーはそれぞれシンガーソングライターや別バンドで違った音楽活動を行っており、アーティストとしてのキャリアは豊富に持っている実力派なのだ。その実力を裏付けるように『変身コンプレックス』に収録されている6曲とも、完成度が高い。

vivid undress「主演舞台(SYUEN BUTAI)」MV

 例えば、1曲目に収録されている「主演舞台」は、アコースティックギターの弾き語りで始まる楽曲で、最初のしっとりしたサビ→短めのイントロ→Aメロの入りが秀逸なナンバーだ。“ポップ”がウリの楽曲の場合、楽曲内のメリハリの付け方が重要になってくるが、「主演舞台」はポップソングのお手本にしたくなるほど、このメリハリの付け方が絶妙なのだ。サビを劇的なものにするため、サビ前で短いタメを作り、音を継ぎ足し、それぞれの楽器のボリュームをあげることで音のダイナミズムを生み出している。さらにサビになるとバンドサウンドだけではなく、ストリングスなどを継ぎ足すことで盛り上がりを鮮やかに映しているわけだ。この、バンドサウンドと上モノのバランスが見事で、聴き心地の良さを際立たせている。

 ただポイントなのは、この楽曲が爽やかで聴き心地がいいだけではないということ。アルバムのタイトルが『変身コンプレックス』となっていることからも分かる通り、このアルバムに収録されている楽曲は、コンプレックスに光を当てているところが重要なのである。

 ポップで爽やかに感じるのが“変身後の姿”なのだとしたら、ある種の闇や苦悩も歌の中に内在していることになる。確かに歌詞をみると、その片鱗を垣間見ることができる。「主演舞台」の歌詞で大きく言葉として割かれているのが、主演になった自分の姿ではなく、主演になるまでの悩みや足踏みしている現状だったりするのだ。サビのラストを飾る〈何度だって生まれ変わる〉を言えるようになるまでの自分をフィーチャーしている、とでも言えばいいだろうか。美化した自分ではなく、生まれ変わることを決意する泥臭い自分が歌詞に投影されていると言えば、この歌の魅力がよりはっきりと見えてくるように思う。

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