「K-INDIEチャート」日本版スタートを機に探る、韓国インディーシーンの今「レトロサウンドをどう現代的な感覚で実現できるか」
日本の音楽シーンは“多様性”があることが長所
――お二人は、日本のリスナーや音楽シーンにどういった印象を持っていますか?
イ・チャンヒ:多様な音楽が存在するということが、日本の音楽シーンの大きい長所だと思います。多様性が存在するのは、音楽を聴いてくれるリスナーや、CDを購入して、ライブを観てくれる文化的な体験サイクルがあるからですが、そういう点が印象的ですね。
キム・ソニ:私はずっとメジャーレーベルやマネージメントに関わっていましたが、色々なジャンルの音楽が存在する日本のマーケットには非常に興味がありました。実は、私自身がオタクでもありますが(笑)、韓国のアーティストを日本で紹介したい、日本のアーティストも韓国で紹介したいと思っているので、日本の音楽シーンにより愛情を持っているかもしれないですね。
――たしかにオタク気質というか、熱心な音楽ファンも多いですね。
キム・ソニ:日本のリスナーは色々な音楽を自分でディグって聴くところが良いですね。音楽を聴いてくれる層が広いところは羨ましいです。音楽やアートに対してマニアックなリスナー、ユーザーがいてくれるのはすごくいい環境ですね。
――なるほど。では、具体的に最近人気のあるアーティストについて教えていただくことはできますか?
イ・チャンヒ:韓国では今、大きく分けるとイージーリスニング系とレトロサウンドという2つのジャンルが非常に流行しています。特に、レトロサウンドを現代的な感覚でどうやって実現できるかがポイントです。例えばイージーリスニングインディー音楽は、静的でメロディー中心の作品で赤頬思春期(BOL4)などの音楽が人気で、レトロなインディー音楽はJANNABI(ジャンナビ)のようなバンドサウンドが人気です。特にレトロサウンドは、70年代から80年代のサウンドを現代的にリバイバルしたものですが、ポイントは斬新なサウンドにすること。現在のサウンドを含め、どうやって洗練されたサウンドとして表現するのかがポイントです。
キム・ソニ:韓国ではレトロと新しさを合わせた“ニュートロ”がここ数年人気で、日本の渋谷系もネオ渋谷系として流行ったり、HIPHOPもちょっとジャジーな感じだったり、イージーリスニング系のサウンドがトレンドになってきています。それは韓国というより、全世界でのトレンドなんじゃないかなと思います。
コロナ禍における韓国でのライブ事情
――韓国で人気の高い日本のアーティストはいますか?
イ・チャンヒ:SEKAI NO OWARIは韓国のAXホール(現YES 24 Live Hall)という2000キャパくらいのところでライブをやっていて、知名度が高いですね。
キム・ソニ:あと、ONE OK ROCKは特に人気がありますね。以前一緒にインタビューしたリア・キムさんとか業界でも好きな人多いし。それからシティポップもトレンドなので、弘大では昭和の日本の音楽も、Night TempoのようなDJがVaporwaveやFuture Funkスタイルで流したりしています。
――日本では新型コロナウイルスの影響で以前のようなライブができなくなってしまっているんですが、韓国では今どういう状況ですか?
イ・チャンヒ:以前はインディーアーティストの活動の多くを占めているのがライブだと言えるくらいだったので、韓国でもすごく損害が大きいです。韓国ではオンラインライブを“レンソン(LAN線)ライブ”と呼ぶのですが、視聴者がライブを視聴し、口座振り込みなどで支援する形で増えてきています。キャパが小さいライブハウスより、リミットがないのでむしろ良い実績に繋がるケースも見られます。
――日本では、ソーシャルディスタンスをとったり、キャパシティの50%以下といった指標のもとで徐々に再開していく見込みもあります。韓国のライブハウスではそういったルールなどはありますか。
イ・チャンヒ:韓国も日本と似たような状況で、小規模のライブはソーシャルディスタンスを保ちながら再開できるようになってきています。ただ、インディーアーティストが出演する大型フェスはキャンセルや延期が多く、まだ厳しい状況ですね。席がある場合は隣の席を必ず空けて座ったり、キャパの50~70%程度のチケット販売をして、座席の間隔を1~2メートル離れて配置したりする場合もあります。
――日韓をつなぐ架け橋として、お二人が今後やっていきたいことを教えてください。
イ・チャンヒ:今、K-INDIE CHARTが良いスタート地点だと思うので、どんどん重要なポジションに成長できればと思います。チャートをきっかけに日本と韓国のアーティストが音楽で交流しながら、日本のいい音楽も韓国で紹介したいです。もちろんライブもやりたいですが、オフラインだと今はどうしてもリスクが高いので、オンラインでできることをやっていければ、と。オンラインでコラボをしたり、一緒に作品も作れたらなと思います。
キム・ソニ:<Bside>やK-INDIE CHARTを通じて日本のリスナーに韓国のインディー音楽を知らせて、日韓の交流ももっと広まってほしいし、逆に韓国でも日本のインディー音楽を紹介できる機会があればいいなと思います。日韓のアーティストでのコラボがたくさん実現して、音楽だけじゃなく、カルチャーの交流がもっと活発になってほしいという思いもあります。コロナの影響で準備していた韓国アーティストの来日公演はしばらく難しいと思いますが、その代わり日韓でオンラインフェスを企画していて、メディアと一緒に組んでやっていければと思っています。
■関連リンク
K-INDIE CHART JP VOL.175
Spotify Playlist
Bside Official Site
Bside Twitter
Bside Instagram
Bside Facebook
Bside Youtube Channel