韓国インディロックに新展開? Silica GEL、Say Sue Meら変わりゆくシーン牽引するバンド4組
「韓国の音楽」といえば、グローバルに躍進を続けるK-POPのアイドルグループを真っ先に思い浮かべる人が多いだろう。その一方で、新曲「Citizen Kane」も話題のHYUKOHや、女性シンガーソングライターのイ・ランの活躍を通して、日本でも、K-POP以外の音楽が浸透しはじめている。
とはいえ、日本で注目を集めやすかったのは、チャン・ギハと顔たちやSultan of the Disco、そして前述のHYUKOHなど、ファンクやディスコ、R&Bのフィーリングを消化したものーーつまり、いわゆる「ブラックミュージック」の影響が色濃いものだったように思う。
ここ1〜2年で頭角をあらわしてきたロックバンドは、そうした系譜とはまた違ったサウンドを奏でている。本稿では、4つのバンドを例に、韓国インディロックのいまを紹介しよう。
Silica GEL
Silica GEL(シリカゲル)は、2013年、ソウル芸術大学の学生を中心に結成された7人組。2015年に1st EPをリリースして注目を集め、2016年には韓国大衆音楽賞の新人賞を受賞。楽器の演奏を担当するメンバー5人全員が作曲を担当しているため、サウンドはバラエティに富む。フォーキーであったり、ファンキーであったり、ドリームポップ的であったり、まさにハイブリッド。と同時に、どこか牧歌的で人懐こいメロディに韓国らしさを覚える。
アートワークやMVも自ら手がけるDIY精神も見どころだ。これからの活躍が期待されていたが、残念ながらメンバーの兵役の関係で現在は活動休止中。カムバックが果たされることを願ってやまない。
ADOY
ADOY (アドイ)は、2017年にデビューした4人組バンドだ。活動開始から日は浅いものの、他バンドでキャリアを積んだメンバーが集まっている。ボーカルのオ・ジュファンとドラマーのバク・グンチャンは、SUMMER SONICへの出演経験もあるEastern Sidekickの元メンバーだ。Eastern Sidekick時代はガレージロックにのせてワイルドな歌声を披露していたオ・ジュファンは、ADOYでは80年代を意識したシンセポップの上でささやくような甘いボーカルを聞かせてくれる。流麗なメロディラインと女性コーラスが印象的だ。
彼らのEPやシングルのアートワークには、少しレトロなアニメ調のイラストが用いられている(上のジャケ写は最新曲「Young」のもの)。手がけているのは韓国の画家であるAokizy。サウンドの質感とあいまって、折からの80年代リバイバルのみならず、ヴェイパーウェイヴやフューチャーファンクの文脈も深読みしたくなる。
Se So Neon
2017年もっとも注目を集めたバンドといえば、2016年結成の3人組Se So Neon(セソニョン)だ。つい先日(5月22日)初来日公演を果たした彼らは、正式に音源をリリースする前からそのパフォーマンスが評判を呼んでいたが、2017年リリースのデビューEP『夏羽』が評価され、2018年の韓国大衆音楽賞では新人賞と最優秀ロックソング賞を受賞。ミュージシャンからの支持も厚く、2017年の単独公演で、HYUKOHがシークレットゲストとしてオープニングアクトを務めたことも話題になった。
彼らの魅力は、抜群の演奏力とうねるようなグルーヴだ。サイケデリックなギターと縦横無尽に動くベースライン、力強いドラムスのアンサンブルには、新人らしからぬ貫禄がある。女性ボーカル兼ギターを務める、ファン・ソユンのハスキーで中性的な歌声も、バンドにとって重要なアクセントになっている。骨太さと繊細さを兼ね備えた音楽性に、今後の活躍が期待される。