[Alexandros]、go!go!vanillas、Base Ball Bear……リモートセッションによって生まれた過去曲の新たな表情

 コロナ禍はロックバンドの“当たり前”に大きな影響をもたらした。スタジオに集まり音を鳴らし合うセッションは行えず、制作活動も思うようにできない。そんな中で、過去曲をメンバーが個々の場所でアレンジし直す、リモートセッションを行ったバンドもいる。本稿では3組のバンドがリモートで制作した作品たちを紹介したい。

[Alexandros]『Bedroom Joule』

 [Alexandros]が6月21日にリリースした、リモート制作アルバム『Bedroom Joule』は、「ベッドルームの力量」と名付けられた題の通り、就寝時にぴったりな穏やかな聴き心地だ。

 チルアウトを誘うリズムでしっとりした質感へとモデルチェンジした「Run Away」や「Adventure」、アコギの音色を纏いじっくりとメロディに浸れる「starrrrrrr」や「月色ホライズン」など、大型フェスやスタジアムライブを沸かせてきたアンセムたちが装いを新たにして収録されている。どの楽曲も川上洋平(Vo/Gt)は耳元で囁くようなボーカルを聴かせ、その歌声の魅力も再発見できる。

Run Away (Bedroom Version)
Starrrrrrr (Bedroom Version)

 無数に重なったコーラストラックで侘しさを注入した「Leaving Grapefruits」、タイトなビートメイクでダンスチューンとしての強度を高めた「Thunder」など、原曲のイメージを深める形でリビルドされた楽曲もあり、音作りのこだわりを細部まで感じることができる。踊Foot Worksのラッパー・Pecoriを客演に迎えた「city feat.Pecori」など、枠を取り払った自由なフォームも楽しめる。

[Alexandros] - Bedroom Joule (Teaser)

 ラストを飾る新曲「rooftop」は大切な人とのビデオ通話の情景から、人と触れ合える愛しさを描き出した素朴な祈りのようなナンバーだ。すでにスターの風格を携えている彼らだが、この作品ではリラックスムードの中で素のままの言葉を紡いでいる。バンドの持つ多面性が最大限に提示された作品といえよう。

『Bedroom Joule』

 go!go!vanillasが6月12日に配信リリースした5曲入りEP『ドントストップザミュージック』は、5月5日にYouTube上で放送されたリモートライブの音源をまとめた作品。ミックスもメンバーで行うなど、DIYで制作されたハンドメイドな楽曲集だ。

『ドントストップザミュージック』

 新曲1曲のほか人気曲のアコースティックアレンジが4曲収められているが、これらはただ楽器を持ち替えて録り直しただけではない。「スタンドバイミー」は原曲の軽快なモータウン調からテンポを落とし、2本のアコギが絡み合うオーガニックな仕上がりに。原曲ではシンセが煌めく「Do You Wanna」も、艶やかな弦の音色が印象的な楽曲へとドレスアップ。「マジック」では原曲のイントロをスキャットに置き換え、跳ねるリズムを土台にカントリーテイストを強調するなど、楽曲に新たな解釈を与えるリアレンジばかりだ。

 4月5日にTwitter上で一部分が公開された表題曲「ドントストップザミュージック」は、不安に包まれるバンド、シーン、そしてリスナーを丸ごと鼓舞する楽曲だった。それに引き寄せられるようにポジティブなバイブスを放つ楽曲が選ばれたこのEPは、全編通して温かな手触りながらとてもエネルギッシュだ。怪我で休んでいた長谷川プリティ敬祐(Ba)のレコーディング復帰作「アメイジングレース」の〈僕らの未来に賭けてみよう〉という言葉が最後に歌われるのも偶然ではないはずだ。

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