『Mステ』から『エール』までーー“声のプロフェッショナル”たる声優らによるナレーションの魅力

アニメ声優のナレーションが聞ける番組に注目

 現在放送中のTV番組において、レギュラーでナレーションを担当している声優は数多い。バラエティ番組や情報番組などを中心に、全国ネットのレギュラー番組だけを見てもざっと50例は下らない。これに衛星放送やローカル番組、特番、単発仕事などを加えれば、その数字が膨れ上がることは容易に想定できよう。きちんと統計を取ったわけではないが、ナレーションの含まれるTV番組のけっこうな割合を声優ナレーターが占めていると言っても間違ってはいないはずだ。

 注目すべきは、ナレーション活動を主戦場とするベテラン勢だけでなく、アニメ現場がメインと言っていい若手〜中堅の名前も徐々に見かけるようになったことだ。以下では、そんな彼らが活躍する番組を中心に、アニメファン/声優ファンにもチェックしてもらいたいものをいくつか紹介したい。

テレビ朝日の音楽番組は要チェック

 まず外せないのが音楽番組だ。自らも音楽活動を行う声優を中心に、多数の若手や中堅が起用されている。代表的なものが『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、メインナレーターの服部潤を据える一方、上坂すみれや佐倉綾音といった“アニメ声優”のイメージが強い若手も起用。さらに昨年からは神谷浩史も加わり、その美声で番組を華やかに彩っている。同番組では、過去に村井かずさや皆口裕子らも起用されていた。

 テレビ朝日系列ではほかにも、ヒャダインがMCを務める個性派番組『musicる TV』を内田真礼が、ラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』を木村昴が、若手男性アーティスト紹介番組『Break Out』を駒形友梨が担当。ちなみに『Break Out』では過去、諏訪部順一や中島沙樹、種田梨沙、石原夏織、豊田萌絵といった面々がナレーションを歴任してきている。

 音楽番組という接点では、TBS系列で今年3月にスタートしたライブ特化型番組『CDTV ライブ!ライブ!』に下野紘が起用されている。さらに、同番組では天崎滉平のような注目の若手も併せて起用している点にも注目だ。

ドキュメンタリー系番組での落ち着きあるナレーション

 音楽番組以外では、ドキュメンタリー系の番組に注目したい。バラエティ番組ほどのテンションやキャラ作りが求められないため、普段あまり聞けないシリアスで落ち着いたテイストのリーディングを楽しめるケースが多いからだ。中でも、『セブンルール』(カンテレ・フジテレビ系/小野賢章)、『BACKSTAGE』(TBS系/花澤香菜)、『ハロドリ。』(テレビ東京系/櫻井孝宏)の3本はマストで要チェックだろう。ぜひ番組と一緒に、彼らのナレーションにも耳を傾けて欲しい。

セブンルール

 また、『有田Pおもてなす』(NHK総合/杉田智和)や『あちこちオードリー〜春日の店あいてますよ?〜』(テレビ東京系/内田真礼)のような、濃度の高いお笑い番組に声優が起用されるようになったのも興味深い。内田に関しては前述した音楽番組『musicる TV』も担当しており、コアな視聴者向けのハードボイルドな番組を複数務めていることになる。彼女の底抜けに明るいポップなナレーションによって、内容のマニアックさを中和させようという意図が制作側にはあるのかもしれない。

 ナレーターの声と番組には強い結びつきがあるため、たとえば滝口順平の声を聞くだけで『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)を即座に思い浮かべる人は多いはずだ。本稿では若手〜中堅声優がレギュラーでナレーションを務める放送中の番組を中心にピックアップしてみたが、今後これらの番組が長寿化していくことで、『ぶらり〜』と同じような効果をもたらすことになる可能性は十分にある。

 TV番組を楽しむ際には、出演者のみならず、姿なきその声にもぜひ注目してもらいたい。

■ナカニシキュウ
ライター/カメラマン/ギタリスト/作曲家。2007年よりポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」でデザイナー兼カメラマンとして約10年間勤務したのち、フリーランスに。座右の銘は「そのうちなんとかなるだろう」。

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