鬼頭明里、内田真礼、早見沙織、田所あずさ……ユニゾン 田淵智也が引き出した声優アーティストたちの新たな表現

鬼頭明里『STYLE』

 6月10日に1stアルバム『STYLE』をリリースする鬼頭明里が、同作に収録される「23時の春雷少女」を先行配信、さらに視聴動画を公開した。カラフルな衣装に身を包んだ映像とポップな曲調に、「おしゃれ」「可愛い」「○○色のあかりんが好き」など様々なコメントが寄せられた。同曲の作詞作曲を手がけている田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)は、鬼頭の他にも内田真礼、早見沙織、大橋彩香などへの詞曲提供や、声優ユニット・DIALOGUE+のプロデュースなど、女性声優とのタッグが多く見られる。本稿では、田淵による楽曲と女性声優との親和性の高さや、彼女らの新たな表現を引き出す楽曲の魅力を考察する。

田淵節が詰まった鬼頭明里「23時の春雷少女」

 鬼頭は、昨年シングル『Swinging Heart』でアーティストデビュー。今年2月にリリースした2ndシングル曲「Desire Again」では、ソリッドなロックサウンドに乗せてワイルドな歌声を聴かせ、夜の街でロケを行ったシーンを含むMVでは、ストリートスタイルのファッションも披露していた。鬼頭はここ最近『鬼滅の刃』の竈門禰豆子を筆頭に『地縛少年花子くん』の八尋寧々、『虚構推理』の岩永琴子といったダークファンタジー作品のヒロインを演じることが多く、そんなイメージともばっちり合った楽曲だったと言える。

鬼頭明里 2月26日(水)発売 2ndシングル「Desire Again」試聴動画

 そんな鬼頭の1stアルバム『STYLE』には、神田ジョン、昆真由美、久保正貴(Black Butterfly)、Sakuなど多彩なクリエイターが参加し、シューゲイザー、エモーショナル、ライブチューンなど多彩なロックサウンドを収録。その中でも田淵が作詞作曲を務めた「23時の春雷少女」は、鬼頭の新たな一面を引き出していて聴き応えがあるナンバーだ。

 「23時の春雷少女」には、“田淵節”と呼べるポイントがいくつもある。例えばフワッとした浮遊感のあるコーラスや、早口になるメロディ展開がそうだ。こうしたリズムと一体になったメロディは、歌手自身のリズム感が問われる。ポテンシャルの限界ギリギリに立たされたことによって、鬼頭が持つ本来の個性や素の表情が見事に引き出されたと言えるだろう。

鬼頭明里 6月10日(水)発売 1stアルバム「STYLE」収録曲、「23時の春雷少女」試聴動画

 また、ロックンロールやソウルなどのルーツミュージックを基盤にしながら、そこにトリッキーなアイデアを加えることで生まれるキャッチーさも田淵節だ。「23時の春雷少女」は田淵の盟友であるやしきんと成田ハネダ(パスピエ)によるアレンジによって、変拍子を織り交ぜた王道のジャズの展開を聴かせている。そこに懐かしさや親しみやすさが加わることで、歌い手である声優の存在をグッと近くに感じることができるのだ。

 そして「23時の春雷少女」というタイトルの付け方も、実に田淵流。同曲は恋の気持ちを、パソコン用語を用いながらコンピュータになぞらえて歌ったもの。恋に落ちた瞬間の身体に電気が走るような感覚を、春の訪れを告げる季語“春雷”という言葉で表した、乙女心と風情が絶妙にマッチする言語感覚が非常に心地良い。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる