平手友梨奈、いま改めて考える欅坂46での存在感 『欅共和国2017』“非予定調和”の興奮

 話を戻すと、そんな中で『欅共和国2017』だからこそ堪能できる彼女の魅力というものがある。ソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」では真っ赤なスーツに身を包み、大きなハーレーにまたがって会場に登場。ちょうど先日ストリーミング配信の解禁した山口百恵や、「少女A」や「十戒」での中森明菜、あるいは相川七瀬あたりを彷彿とさせる力強い女性像。そうしたキャラクターを演じるときの彼女は一段と輝きを見せる。

 逆に、「手を繋いで帰ろうか」で見せた満面の笑みも確実に彼女の魅力のひとつだ。それまで気丈に振る舞っていた表情が一転して和らぎ、会場が瞬時に温まる。そして真っ暗闇の会場で披露した「不協和音」では、俗に言う”獲物を狙う目”を覗かせる。徐々に日が暮れて会場の雰囲気が変わっていくのと同じように、彼女の表情もまた様々に変化を見せた。

 また、ダブルアンコールの「危なっかしい計画」の直前では、「あぶなっかしい、けえかくー!」と今ではほとんど出さないような大声で観客をめいっぱい煽っている。春先に声が出なくなった期間があったこの年。それを経て、ファンの前で元気な姿を久しぶりに見せたライブでもあった。先ほど”ハラハラ”という言葉を使ったが、逆にこうして安心させられる場面もちゃんとある。

 カリスマ的イメージの強い平手友梨奈。そんな彼女も、こうした様々な表情を見せる貴重な公演になったのが、まさに『欅共和国』だった。

 今年はあえなく開催が見送られることとなったが、またいつか開催されたときには、あのとき抱いた”心のざわつき”を思い出しながら入国したい。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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