遥海は混沌の時代に“一筋の光”をもたらすシンガー メジャーデビュー曲「Pride」が纏う気高さ
どこか閉塞感が漂う現代。SNSはネガティブな話題で溢れ、制限された生活の中でストレスを感じることも多い。そんな、終わりが見えない混沌の時代に、“一筋の光”となる女性シンガーが数えきれぬ希望を連れてデビューを果たした。彼女の名前は遥海。高らかに伸びる歌声を武器に、すでに全国各地のリスナーを魅了している23歳である。
人間離れした歌唱センスを持つことから、遥海に生まれ持った才能や環境を見出す人もいるかもしれないが、彼女こそ、堅実な努力によってキャリアを勝ち取ってきたアーティストだと筆者は確信している。日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた遥海は、教会で見たゴスペル隊に触発され、わずか3歳でゴスペルチームに参加。13歳の頃には、生まれ育ったフィリピンから日本に移住して生活をすることになるも、当初は日本語が全く喋れずに苦労したという。流暢に日本語の楽曲を歌う今の姿からは想像できない事実だ。この出来事をきっかけに、遥海は言葉を超えた感情の表現を求め、自分らしい歌の伝え方を追究し始めることになる。
2013年には、元より憧れていたというオーディション番組『X FACTOR』の日本版『X Factor Okinawa Japan』に出場。圧巻のボーカルと堂々とした立ち振る舞いでたちまち脚光を浴び、遥海にとって大きなターニングポイントとなった(なお、後に遥海は本家である『The X Factor (UK)』にもチャレンジし、惜しくも途中敗退したものの、あのサイモン・コーウェルから称賛を浴びた)。以来、『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)をはじめとするメディアにも出演してレベルアップを続ける中、2018年に実施したクラウドファンディング企画『Road to Zepp』では、目標金額を早々にクリアする偉業を達成。この頃になると、遥海の情熱に胸を打たれた大勢のサポーターが、彼女の未来を信じ、見守るようになっていた。
遥海と同じくフィリピンをルーツに持つBeverlyや、ダイナミックなボーカルで聞かせるRIRIやmiletなど、いわゆる本格派に該当するような歌い手は今も数多く存在するが、遥海独自の特長を挙げるとするならば、バラードにおけるずば抜けた表現力だろう。ライブやテレビ番組ではかねてよりバラードのカバーを披露しているが、カバー元が天下のビヨンセであろうが誰であろうが、遥海はそのつど落ち着いた温かさを吹き込み、楽曲に抑揚豊かな盛り立がりを生み出してきた。荒ぶった節回しにさえ確かな知性を感じるのはひとえに、彼女が音楽をこよなく愛し、真っ向からエモーションをぶつけている他ならぬ証左だと思う。もちろん、その傾向は自身の作品にも色濃く現れている。特に、2019年リリースのインディーズ作『MAKE A DIFFERENCE EP』収録の「DARE ME」や「君のストーリー」は、遥海のエレガントなニュアンスが堪能できる美しい名曲である。