瑛人、TikTok発のヒットでバイラルチャート常連に シンプルなサウンドで際立つ、時代の真ん中を射抜く言葉
何よりも聴き手の心を掴んでいるのは歌詞だろう。自身の経験なのか定かではないが、パーソナルな心の機微を描いた歌詞は、多くの聴き手が自身を投影しやすい。忘れていたはずなのに、ふとした拍子に大切な思い出が脳内に溢れ出す瞬間ーーそんな心情を香水とかけ合わせた〈君のドールチェアンドガッバーナの/その香水のせいだよ〉というひと言は、「香水」という曲を象徴する素晴らしい歌詞だ。他にも〈HIPHOPは歌えない/俺はリアルじゃないからさ〉(「HIPHOPは歌えない」)など、耳に残るパンチラインを書くことに非常に長けている。体を揺らしたくなるリズミカルな曲調は、兄の影響で聴いていたというヒップホップの影響なのかもしれないし、高校時代ダンス部だったという瑛人自身の感性が表れているのかもしれない。そんなシンプルながらも一癖ある楽曲が、多くの人の心を虜にしているのだ。
TikTok発のバイラルヒットについては、以前も書いた通りますます増えてきている。だが、その中でも昨今のコロナ禍において、部屋でひとり過ごしながら、大切な人や懐かしい記憶に想いを馳せることができる楽曲は、図らずも時代の真ん中を射抜いているのだ。1年以上前にリリースされた瑛人の楽曲たちのチャートインは、全くの偶然ではなく、困難な時代を生きる人々の心情と共鳴して生まれた、必然的な出来事だと言うこともできるだろう。