サカナクション、「#夜を乗りこなす」ライブ映像配信企画から辿るバンドの歩み パフォーマンスの進化にも着目

SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE 2013.5.19-

 続く3月15日に放映されたのは2013年の6thアルバム『sakanaction』ツアーのファイナル『SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE 2013.5.19-』。幕張メッセのフロアを取り囲むようにスピーカーを設置し、圧巻の体感を生むサラウンドシステムを組んだ特別公演の始まりだ。自分たちの美学を守りながら、ファンベースをお茶の間へと広げた2012年~2013年。その集大成を理想的で圧倒的な音で届けたいという彼らの飽くなきこだわりの結実である。ヒット曲も長尺のインスト/リミックスも等しく2万人に向けられ、自在に観客の心と体を揺らす。大衆性と実験性、ポップとアートを同居させたこのライブの成功は同年末の『NHK紅白歌合戦』出場に繋がったと言える。

サカナクション – LIVE Blu-ray&DVD「SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction」 トレーラー Vol.1

SAKANATRIBE 2014 -LIVE at TOKYO DOME CITY HALL-Standard Edition

 3月28日には2014年初頭のライブハウスツアー『SAKANATRIBE 2014』の模様が放映された。“0から100へ”をコンセプトに、無演出のメンバー5人だけの音出しから幕を開け、チームサカナクション総動員で多彩な見せ方/聴かせ方を展開するこの公演。『NHK紅白歌合戦』出場の前年頃から、山口は次なる目標として“リスナーの血を濃くしていくこと”を語るようになっており、獲得したファンにサカナクションの底知れなさを植え付けるべく敢行された濃密なツアーだ。“種族”を意味する“TRIBE”を冠した『SAKANATRIBE』たるツアータイトルもそのテーマを汲んでおり、聴き手を巻き込んで未来の音楽シーンを作り出そうと画策し始めた季節と言えよう。

サカナクション/LIVE Blu-ray「SAKANATRIBE 2014-LIVE at TOKYO DOME CITY HALL-」トレイラー

SAKANAQUARIUM2015-2016 “NF Records launch tour”-LIVE at NIPPON BUDOKAN 2015.10.27-

 4月11日に上映されたのは2015年、草刈の産休・育休を経て、1年半ぶりに開催された全国ツアー『SAKANAQUARIUM2015-2016 “NF Records launch tour”』の日本武道館公演。他カルチャーと音楽を結びつけるイベント『NF』の発足、その実現を行うためのレーベル<NF Records>の設立、マニアックな側面を伝えるカップリング/リミックスアルバムのリリース、そして新たな代表曲「新宝島」の披露など様々な意義を携えて行われたこのツアー。特殊な形状の幕を用いた演出、和太鼓隊と踊り子を交えてトランス状態を作り出す怒涛のインストセクションなど、異様な祝祭感を帯びており、その熱狂度の高さは過去屈指だ。〈このまま君を連れていくよ〉と「新宝島」でも歌った通り、サカナクションはリスナーを強烈な新体験へと導く役割を担うバンドとなった。

サカナクション/SAKANAQUARIUM 2015-2016″NF Records launch tour”-LIVE at NIPPON BUDOKAN 2015.10.27-

SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around

 4月18日に放映されたのは2017年のデビュー10周年ツアーの日本武道館公演を収めた『SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around』。新旧問わぬ幅広い選曲でサカナクションの歩みをショーアップした記念碑的公演だ。アップグレードされた音響と大量のLEDライトで織り成す壮大なステージは圧巻であり、メジャーでの活動を結晶化したような意義深さを持つ。ライブの後に放映されたメイキング映像には、豊富なアイデアとそれを凄まじい瞬発力で実行していくプロフェッショナル達の姿が捉えられており、10年間培ってきたチーム・サカナクションの結束力が存分に実感できる作品だ。

サカナクション / LIVE Blu-ray、DVD「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY ~」 Digest Movie

 今後も毎週土曜日に予定されているサカナクションのライブ映像配信。この企画に紐づいたハッシュタグ「#夜を乗りこなす」は、彼らの楽曲「さよならはエモーション」の歌詞から取られている。〈さよなら 僕は夜を乗りこなす ずっと涙こらえ/忘れてたこと いつか見つけ出す ずっと深い霧を抜け〉と歌ったこの曲は、コロナ禍において暗中模索を続ける社会を鼓舞するようにも聴こえてくる。サカナクションもツアーが延期となり、思うような活動をできない現状がある。そんな折における「#夜を乗りこなす」ライブ映像配信はファンの士気を高めるだけでなく、これを機にサカナクションに出会う新たなリスナーの存在も見据えているのだろう。ファンからの資金援助を募る「NF NICEACTION」という試みも同時に開始し、サカナクションは未来に向けて力を蓄え始めている。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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