KEYTALK、KANA-BOON、ロットン、スカパラ、マンウィズ......今春ベストアルバムでキャリアを総括するバンドたち
MAN WITH A MISSION
さて、最後に紹介するのは、4月1日にB面&カバー集『MAN WITH A “B-SIDES & COVERS” MISSION』、そして4月29日にリミックス集『MAN WITH A “REMIX” MISSION』を立て続けにリリースするMAN WITH A MISSIONである。今年2月9日に結成(つまり南極の氷の中から復活)して10年を迎えたオオカミたち。その記念プロジェクトとして、上記2作品に続いてベストアルバム『MAN WITH A “BEST” MISSION』のリリースが控えている。
さて、この10年の彼らのキャリアを振り返ると、その見た目のかわいらしさとは裏腹に、ロックバンドとして非常に真っ当に楽曲を積み重ねてきた彼らの真面目な歩みが見えてくる。MAWMのみならずロックフェスやロック系DJイベントでの一大アンセムとなった「FLY AGAIN」の、シンプルなサビメロでどこまでも高揚していくあの感じ、荘厳でスケールの大きなイントロから一気にエモーショナルなメロディが爆発する「Emotions」、アグレッシブなビートと鋭いギターリフが問答無用でリスナーを鼓舞する「Raise your flag」、メッセージがこもったドラマティックなメロディが美しい「Remember Me」など、彼らの楽曲はどれも本気で“ど真ん中”に投げ込まれている。音楽的な機能性も真摯なメッセージも演奏のワザもすべてが常にハイカロリー。一切手をゆるめることなくパンパンに注ぎ込まれているのがMWAMのロックだ。
パンクロックの激しさとメッセージ性、ミクスチャーロックの力強さ、ダンスミュージックの高揚感。つまりロックミュージックがその長い歴史の中で獲得してきたすべてを混ぜ合わせて最大出力でぶちかますこと。MAN WITH A MISSIONがやってきたのはそういうことだ。彼らは常にロックの先達へのリスペクトと愛情を楽曲に込め、磨き抜かれた演奏スキルによって体現してきた。言葉を換えるなら、この時代にロックのロマンとパワーを復権するために走ってきたといってもいい。“オオカミ人間”という特異でキャッチーなキャラクターは、それを可能にする最大の武器となった。今や彼らがオオカミなのか人間なのか、気にする人はひとりもいないだろう。堂々ロックの王道に立つバンドとして、MWAMはますますスケールを広げ、のびやかに進化している。
■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。