KEYTALK、KANA-BOON、ロットン、スカパラ、マンウィズ......今春ベストアルバムでキャリアを総括するバンドたち

ROTTENGRAFFTY

ROTTENGRAFFTY『You are ROTTENGRAFFTY』

 先ほどの2組と比べるとぐっと世代が上がり、昨年結成20周年を迎えたのが“響く都”京都の雄、ROTTENGRAFFTYだ。ファンリクエストとメンバーセレクションによる2枚組ベストに『You are ROTTENGRAFFTY』というタイトルをつけるところからして彼らの姿勢が鮮明に出ている。

 メンバーが選んだ楽曲が並ぶディスク2の1曲目「暴イズDE∀D」やファンリクエストで選ばれディスク1に収録された「夕映え雨アガレ」など初期の楽曲の衝動の塊とでもいうようなテンションから、和を感じさせるモチーフが印象的な「零戦SOUNDSYSTEM」や「響く都」、クラブミュージックを大胆に取り入れた「D.A.N.C.E.」のような楽曲へ。そこには貪欲すぎるほど貪欲に新たな要素をバンドに取り入れ、自分たちのものにして爆音でぶっ放してきた彼らの歴史が見える。境界を飛び越え世界を広げていく、それこそまさにミクスチャーの精神だ。

ROTTENGRAFFTY「暴イズDE∀D(2020 reRec ver.)」
ROTTENGRAFFTY「夕映え雨アガレ」
ROTTENGRAFFTY「響く都(New Mix)」

 当初は自主企画としてスタートし、2012年以降はフェスへと発展し続いている『ポルノ超特急』にブッキングされているメンツを見渡せばよくわかるが、ロットンを中心にしたバンドの輪は年々広がり続けている。それは彼らがロックというカルチャー、京都という街、そしてともに闘っている仲間。自分たちの人生はもとより、そうした周囲の人生や歴史までをも自分ごととして背負い込んで突き進んでいる証拠だろう。

ROTTENGRAFFTY - D.A.N.C.E.(OFFICIAL VIDEO)

 ファン投票でワンツーフィニッシュを決めた「THIS WORLD」や「金色グラフティー」をはじめ歌詞に散見される〈お前〉という言葉は、彼らのすべての活動がメッセージであることを示している。ディスク2の最後に収められ、すでにライブアンセムとなっている新曲「ハレルヤ」の硬派な響きは彼らの矜持そのものだし、一方で「I Believe」や「アイオイ」のような切実な楽曲がちゃんとファン投票で選ばれていることは、ファンが彼らの音楽だけでなく姿勢と思想そのものに共鳴していることを如実に物語っている。

金色グラフティー / ROTTENGRAFFTY
ROTTENGRAFFTY – 「アイオイ」 Music Video YouTube Ver.

東京スカパラダイスオーケストラ

東京スカパラダイスオーケストラ『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』

 そして、ジャンルを越境して独自のポジションを築いてきたといえば、このバンドも欠かすことはできない。デビュー30周年の今、何度目かの絶頂期を迎えている東京スカパラダイスオーケストラだ。3月18日にリリースされたベストアルバム『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』がとんでもない。

 ディスク1&2の2枚に収められた15曲のボーカルトラックを並べると非常によくわかるのだが、スカパラほど柔軟に音楽性を変化させてきたバンドはいない。桜井和寿が歌う「リボン」、甲本ヒロトが歌う「星降る夜に」、チバユウスケが歌う「カナリヤ鳴く空」、中納良恵が歌う「縦書きの雨」、斉藤和義の歌う「君と僕」――いずれも彼らフィーチャリングされた側のオリジナルだといってもおかしくないような完成度だ。組むボーカリストの“本業”やスタイルや声質に徹底的に寄り添うようにして楽曲を作っていくやり方は、ただ「フィーチャリング」と呼ぶにはあまりにも丁寧で込み入っている。そのしなやかな身のこなしこそ、スカパラがここまでの存在になった大きな要因なのだと思う。

「リボン feat. 桜井和寿(Mr.Children)」Music Video / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ / 星降る夜に
東京スカパラダイスオーケストラ / カナリヤ鳴く空
縦書きの雨 feat.中納良恵(EGO-WRAPPIN') / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ「君と僕 feat. 斉藤和義」

 その意味で、スカパラの真価がわかるのが、ディスク3のインスト盤だ。ここに入っている17曲には、それこそ音楽の自由とスカの世界の広さがはっきりと提示されている。ロマンティックなメロディラインが高揚感を煽る「Break into the Light~約束の帽子~」、妖しげな雰囲気がインパクトのある「火の玉ジャイヴ」に、スカの本領発揮ともいえるパーティチューン「White Light」。こんなにも豊かな表現で、あらゆる感情を描き出すインストバンドがほかにいるだろうか。彼らは30年という歴史の中で、スカという音楽をこんなにも柔軟に、しなやかに乗りこなしてきたのだ。こんなバンドがここ日本で生まれ、長きにわたって続き、そして世界でも認められる存在となったことを、我々はもっともっと誇り、讃えるべきだ。

Break into the Light~約束の帽子~/TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ / 火の玉ジャイヴ
White Light [2020 Remaster]

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