ヒプノシスマイク シンジュク・ディビジョン「麻天狼」ソロ曲考察 “病める街”の闇は晴れたか

観音坂独歩「BLACK OR WHITE」…ストレス地獄を生き残れ!

  観音坂独歩の「BLACK OR WHITE」も、「いつもの独歩だ!」と感じさせるユニークな楽曲だ。DOTAMAの綴った、サラリーマンの鬱屈を凝縮したような毒舌リリック。それが鮮やかな早口で叩き込まれる3分20秒の中に、内向的だが強烈な毒を持つ、独歩の性格が感じられる。

 そして彼もまた、最初のソロ曲「チグリチア」から前進した姿を見せてくれたように思う。〈生きがいも別に無いよ 眠りたいだけ〉と静かに零していた彼は、「BLACK OR WHITE」では裏返った声で宣言する。

〈働きたくないぜ 働きたくないぜ 働きたくないぜ やっぱり働きます!〉

 生きていくには、やっぱり働くしかない。これは社畜、ワーカホリックとしての開き直りなのかもしれない。しかし、少なくとも今の彼からは、以前のソロ曲にはなかった生への執着が感じられるのだ。

〈黒か白の社会で 灰になるまで WORKING〉〈グレーゾーン探して 働き 生きてく〉

ヒプノシスマイク-D.R.B-(麻天狼)「BLACK OR WHITE」

 タイトルにも冠されている"ブラック"と"ホワイト"。誰もがブラック会社を脱出し、ホワイトな会社に勤められたら幸いだが、社会はそう簡単な構造ではない。どちらもでもない「グレーゾーン」で折り合いをつける……そんな生き方を肯定するようなリリックだ。

 仕事のストレスを延々と愚痴っている曲なのだが、段々と"ストレス地獄を生き残れ!"という独歩からのエールに聞こえてくるから不思議である。

 「ヒプノシスマイク」のキャラクターたちのソロ2曲目は、どれもそれぞれの物語に合わせた成長が表現されていた。それは、ディビジョンバトルで挫折を経験しなかった「麻天狼」も例外ではない。軽快なリズムの中に、内なる闇を滲ませながら、それぞれが大きな一歩を踏み出した。

 そして、このCDシリーズのサブタイトルは「Before The 2nd D.R.B」。二度目のD.R.B(ディビジョン・ラップ・バトル)で、彼らはどんな闘いを見せてくれるのか……。このCDをリピートしながら、楽しみに待ちたいと思う。

■宮崎栞
編集・ライター・プランナー。編集プロダクションでエンタメ系の書籍・雑誌制作に多数携わり、現在フリーランスとして活動中。Twiter(@siorin7work

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