大塚紗英、鬼頭明里、伊藤美来、水瀬いのり……冬アニメでも注目集める声優アーティスト楽曲をピックアップ

 本題は、伊藤美来が2月12日に発売した6thアルバム『Plunderer』だ。表題曲「Plunderer」は、TVアニメ『プランダラ』(TOKYO MXほか)オープニングテーマ。疾走感あるロックなサウンドにストリングスが重なった、これまでの伊藤のラインナップにはありそうでなかった一曲。今回のタイアップを機に、音楽活動の新たな扉を開いたことを実感できる。

伊藤美来 / Plunderer(TVアニメ「プランダラ」オープニングテーマ)
伊藤美来『Plunderer』

 そして何よりも特筆したいのが、カップリング曲「hello new pink」だ。同曲で編曲を担当したのは、昨年7月発売の2ndアルバム『PopSkip』リード曲「PEARL」の制作をはじめ、彼女と活動初期からの付き合いである水口浩次。思わず肩を揺らしたくなるスキャットがとても心地よく、“伊藤美来のポップス”を掲げた『PopSkip』とも地続きな、いわゆる“渋谷系シティポップ”に分類される一曲だ。

 また、作詞作曲は伊藤のレーベルメイト・ゆいにしおによるもの。今回の楽曲を機に、にしおの楽曲に出会ったという伊藤だが、昨年12月の自身のLINE LIVEにて「歌詞のワードのチョイスがすごく文学的でいい曲なの」と大絶賛。自身の好きな曲として、にしおの「マスカラ」や「帰路」を挙げながら、前者のワンフレーズを空で歌う場面まであった。

 実際に、にしおの綴る歌詞は伊藤が今まさに築き上げているアーティスト感とも親和性が非常に高い。前述の「PEARL」で描かれた街の景観をはじめ、伊藤の音楽作品では歌詞の情景描写に重きを置く傾向がある。その作風は「マスカラ」に代表されるように、身近なアイテムから好きな男性への想いへと徐々に近づけて結びつけるにしおの歌詞にも合致する。

伊藤美来「hello new pink」

 例えば〈でも無理やり染められて/ブリーチして痛み続けた私の心は?〉という「hello new pink」のワンフレーズでは、“なんでわかってくれないの?”と空回りしながらも彼に尽くしてしまう女性の想いを描写。伊藤と同世代のにしおだからこそ綴れる珠玉の歌詞であり、水口によるジャジーで“抜け感”に優れたトラックの上でさらなる輝きを放ってくれる。間違いなく、今後の伊藤の活動の“担える”楽曲であり、この3名での次のリリースはもちろん、ライブでの共演機会などもあればと願うばかりだ。

 “春アニメ”の放送も中盤となる今年5月には、また新たなリリースラッシュが始まるのだろう。その間にもシングル/アルバムを問わず、数多くの声優アーティストが手塩にかけた作品を発表してくれるはずだ。2020年も声優アーティストによる充実した楽曲リリースに、今から胸が高まってしまう。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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