『Project CO-MUSIX』対談:なかはら・ももた&カメレオン・ライム・ウーピーパイ、「マンガ×音楽」の共鳴で描く身近な愛

なかはら・ももた&CLWP対談

 人気アーティストを多数抱える総合エンターテインメント企業・アミューズと、コミック配信サービス・まんが王国を運営するビーグリーが共同で立ち上げた「マンガ×音楽」のクロスメディアプロジェクト『Project CO-MUSIX』が始動した。

 その第1弾として、4組の漫画家とミュージシャンがコラボレーション。“叶わぬ恋”をテーマとした4篇のオムニバス作品「すべてがサヨナラになる」が展開されている。漫画家とミュージシャンが互いにインスパイアを受け合いながら、どのようにして4つのオムニバスストーリーが完成し、そして「マンガ×音楽」はどのように共鳴し合ったのか、リアルサウンドでは4組の漫画家とアーティストの対談を通して、このプロジェクトの真髄に迫る。

 この記事では、『ずっとキミの側にいました』を手がけた漫画家 なかはら・ももたと、ストーリーを読み、自身の楽曲「This is Love」に今回のプロジェクトのための特別アレンジを加えたカメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-、ふたりの対談をお届けする。(編集部)

『ずっとキミの側にいました』と「This is Love」の共鳴

――おふたりは『ずっとキミの側にいました』の原案、ストーリーを最初に読んだ時、どんな印象を持ちましたか?

なかはら・ももた(以下、なかはら):企画自体は本当に斬新な内容で、まさかマンガと音楽がコラボすることがあるなんてまったく思っていなかったので、びっくりしました。ただ、物語的にはすごく泣けるストーリーだったので、私としても得意分野であるのかなと思って嬉しかったです。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ・Chi-(以下、Chi-):マンガだからこその物語というか、違和感なく物語に入っていける内容だなと思いました。めちゃくちゃ心温まってジーンときたし、共感できる部分もたくさんあって。「こんな物語とマンガが思いつくんだ!」ってびっくりしました。

――たしかに、現実的にはあり得ないものだとは思うんですけど、「あったらいいな」という気持ちになる物語ですよね。なかはらさんは原案をマンガに起こす時、まずどういったところにこだわりましたか?

なかはら:私はすごく昔に一度だけ犬を飼ったことがあったんですけど、実は猫派なんですね。

Chi-:そうなんですね(笑)。

なかはら:少女漫画家って結構猫派が多いんですよ(笑)。なので、ワンちゃんのお話と聞いた時は「描けるかな、大丈夫かな?」とも思いましたけども、代々飼ってきた猫のなかにはすでにこの世にいない子もいるので、その子たちのことを思い出して描けばいいのかな、と意識しました。

なかはら・ももた
なかはら・ももた

――では、主人公のこはなを描く際に特に気を遣ったところ、特別力を入れたところは?

なかはら:背が小さくて目が大きくて真っ黒みたいな、絵柄的には犬よりかわいいというものを目指しました。ワンちゃんが守りたいって思うような女の子にしないといけませんから。

――たしかに。Chi-さんは今回のコラボレーションの話を聞いた時、どう感じましたか?

Chi-:漫画家さんとコラボすること自体が初めての経験でしたし、自分たちの曲をマンガとリンクさせるなんて考えたことがなかったので、すごくワクワクしました。

――楽曲のセレクトはどのようにして決めたんでしょう?

Chi-:今回の企画にお声がけいただいた時に楽曲は「This is Love」でご提案いただいて、事前にマンガを読ませてもらったんですが、そのストーリーと私たちの楽曲「This is Love」との内容がすごく合っているなと思ったんです。絵もすごくかわいくて愛おしいし、「This is Love」という曲自体も身近にある小さな愛について歌っているので、ものすごくピッタリだなと。で、マンガのなかには犬が出てくるというのも、この楽曲自体に近い部分があって。よりマンガに寄り添うためには歌詞を少し変えたほうがよりいいんじゃないかとチームでも話し合い、前半部分に手を加えることにしました。たとえば、ざっくり“愛”と言ってたところを、もうちょっとわかりやすくというか。犬と散歩することであったり、もうちょっと聴いている人がイメージしやすいように具体的な形にアレンジしています。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ
カメレオン・ライム・ウーピーパイ

――それが今回の「This is Love(ずっとキミの側にいました ver.)」なわけですね。なかはらさんはこの曲を聴いてどんな印象を持ちましたか?

なかはら:最初に原曲のほうをYouTubeで聴かせていただいたんですが、この絵にすごく合うなと思いました。曲調も声もMVも、孕んでいる空気感がマンガの物語にぴったりで、とてもいいな、最後に涙腺を刺激するには持ってこいの曲だなとすごく感じました。

Chi-:嬉しいです!

なかはら:最初の歌詞の時から〈足跡〉というワードが入っていたので、小動物性を感じていましたし、そういった意味でも(『ずっとキミの側にいました』に)合っているなと思っていたんですが、このマンガに合わせて歌詞の前半を書き直していただいたことでさらにばっちりハマるようになって。もとの歌詞はこれから愛する者と会っていくストーリーだと感じたんですけども、新しいバージョンでは今近くにいる愛する者への気持ちを歌っている。本当に感動しました。

Chi-:素敵な解釈をしてくださって、すごくありがたいです。私もよりマンガに近づけることを意識したので、実際にマンガを描いた方にそう思っていただけたことで、本当に安心しました(笑)。

【#すべてがサヨナラになる】「ずっとキミの側にいました」(漫画 :なかはら・ももた、楽曲: カメレオン・ライム・ウーピーパイ『This is Love (ずっとキミの側にいました ver.)』 )

――YouTubeで公開されている映像を観ると、なかはら先生が描く絵とカメレオン・ライム・ウーピーパイの曲が重なって、よりエモさが増すんですよ。さらに、実際にマンガを最後まで読んでから「This is Love(ずっとキミの側にいました ver.)」に触れると、さらに胸に迫るものがありました。

なかはら:切なさが増すんですよね。私、最初にこの企画について話を聞いた時は、「マンガから音が出るの? どういう原理で?」と思っていたんですよ。でも、あのYouTubeの映像を観て納得しました。私自身はもともとドラマがすごく好きなんですけど、ドラマや映画はその主題歌と一緒に思い出になっていくところがあるじゃないですか。あの歌を聴くとドラマのあのシーン、あの役者さんの演技を思い出すということがあるんですけど、マンガってそこだけないなとずっと思っていたんです。そういうことがマンガでもできたらいいなと思っていたので、すごく画期的な企画だと思います。きっと、ほかの作品でコラボされている漫画家さんもそう思っているんじゃないかな、と。なので、「This is Love(ずっとキミの側にいました ver.)」を聴いて私のマンガを思い出してくださる人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。

Chi-:私自身、曲を作ったり歌詞を書いたりする時って、聴く人によって意味が変わると言いますか、いろいろな捉え方ができるような作品を作っているつもりなんですね。でも今回はいろいろな捉え方をするというよりも、限定された、統一された捉え方になると思うので、その手助けをカメレオン・ライム・ウーピーパイができると思うとすごく新鮮な気持ちで向き合うことができました。

『ずっとキミの側にいました』
『ずっとキミの側にいました』

――おふたりは本作のこはなとノアのように、身近で愛情を注いできたものとの別れの経験はありますか?

なかはら:長く生きているのでいろいろありますけど、やっぱりいちばんマンガに近いのは猫が亡くなった時。それは本当によく覚えていますね。あと、私の経験ではないんですけど、今回マンガを描くにあたってゴールデンレトリバーの写真を貸してくださった漫画家さんがいらして。その方はずっとゴールデンレトリバーをかわいがっていて、ブログにもよく出てきていたので、一方的に知っているような気がしていたんです。実際、先生のおうちにお邪魔して会ったこともあるんですけど、そのワンちゃんが一昨年ぐらいに亡くなってしまって。写真を見てワンちゃんを思い出したりして、自分のことのように悲しくなったことを覚えています。

Chi-:私の場合は愛情を注いできたというより、愛情を注いでくれた存在の話になるんですけど、いいですか?

なかはら:逆パターンですね(笑)。

Chi-:はい(笑)。祖父の話なんですけど、私が幼稚園ぐらいの時に亡くなったんです。その祖父の話を家族や親戚から聞いているうちに、祖父と私は感覚的に似ている部分が多いんじゃないかと思うようになったんです。最近は、よく「こういう時、おじいちゃんだったらなんてアドバイスしてくれるかな?」「生きていたらどうだったんだろう?」とあらためて考えることも多いんですけど、このマンガを読んだ時に「おじいちゃんもノアみたいに現れてくれたらいいな」と思ってしまったんですよ。

なかはら:感覚が近いからこそ、今の自分ならどういう言葉をかけてもらえるんだろうとか、同じ立場になったらどんな立ち回りをするんだろうとか考えることがあるわけですよね。

Chi-:そうなんです。しかも、その祖父は自由奔放というか、本当に好きなことだけをやって生きた人だったので、その感じが自分にも当てはまる気がしていて。「なんかそれ、わかる」というような、っぽい話やエピソードもあって(笑)。そこに愛おしさを感じますね。今もそういう祖父の話をすると、エピソードが面白すぎちゃって、あまりしんみりとはならないんですよ(笑)。

なかはら:(笑)。

Chi-:「なんだったんだろう、あの人」って感じなので、生き様がめちゃくちゃ最高だなと思います。

なかはら:「面白かったな、あの人」と思い出してもらえるのは、すごくいいですよね。

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