平井堅「#302」と秦 基博「Raspberry Lover」、二大シンガーソングライターによる最新ラブソングの凄み

 いまや、各局がこぞって企画する超尺の音楽番組は年末の風物詩となった。しかしそれだけでなく、今年リリースした肝入りの楽曲を引っさげてのTVでのパフォーマンスは、アーティストにとって真価を問われるような気分もあるのではないだろうか。いわば1年の集大成。自身のファン以外の目にも触れる機会だけに、気合の入った演奏が見られることと思う。

 そんな中、12月27日放送の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2019』(テレビ朝日系)に出演する平井堅と秦 基博。両者ともJ-POPシーンを代表する男性シンガーソングライターであり、今年の後半、それぞれに新曲「#302」と「Raspberry Lover」をリリース。今夜の放送でも両曲が披露される。ベクトルは異なるもののそれぞれが心掴まれる楽曲になっており、どちらの楽曲にもある種の“凄み”が感じられる。本稿では、その要因を分析していきたい。

平井堅『#302』

 まず、平井堅の「#302」だが、こちらは秋クールで放送された金曜ドラマ『4分間のマリーゴールド』の主題歌として起用された楽曲。シンプルなストリングスのアレンジが心に沁みるミディアムバラードとなっており、自身も「“自らの身を削るほどに、焦がすほどに相手を想う気持ち”というところを共通項に、ドラマと並走するような、もう一つのラブストーリーを紡ぐつもりで書きました」とコメントを寄せている(参照:平井堅、『4分間のマリーゴールド』主題歌で記録更新 ドラマを引き立たせるバラード曲の数々)。特筆すべきはリアルすぎる歌詞。カラオケボックスの一室を舞台に、恋人と別れたばかりと思われる“君”とその君に密かに想いを寄せる“僕”とのやり取りが展開していくわけだが、〈人混みかき分け公園通り抜ければ やたら派手な電飾のBOX ぶっきらぼうな声で部屋番号告げられ 二人きりで部屋に入る〉〈君が歌の途中で突然泣き出して 僕は何も言えなくて 取り残された伴奏と泣き声だけが 狭い部屋に響いてた〉など、丁寧な情景描写が続く。まるで楽曲の中に短編映画をまるごとひとつ組み込んでしまったかのような仕上がり。本作ので平井堅は、歌を物語に仕立てる“ストーリーテラー”としての役割を全うしている。

平井 堅 『#302』MUSIC VIDEO

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