Superflyが原点=“0”から導き出した歌への愛情 3年ぶりのライブツアーで繋いだ現在と未来
アンコールは、「サンディ」(本人が出演した「キレートレモン」の新CMソング)から。そして「愛をこめて花束を」へ。幅広い年齢層の観客(男女比もほぼ半々)がサビのフレーズを大合唱するシーンは、まさに圧巻だ。今年の夏のフジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL '19』GREEN STAGE)で巻き起こったシンガロングもそうだが、2008年に発表されたこの曲は、日本の音楽シーンを代表するスタンダードになったと言っていいだろう。
ラストは「フレア」。「(NHK連続テレビ小説『スカーレット』の)主人公に“がんばれ”と応援するような気持ちで書きました」という言葉に導かれたこの曲は、カントリーミュージックの素朴な味わいと穏やかで愛らしい旋律、“心のなかにある炎を大切にしてほしい”という願いがひとつになった楽曲。活動休止の間に彼女は、おそらく“自分にとって歌とは何か?”という命題に向かい合ったはず。その期間を経て辿り着いた新たな名曲だ。
バンドメンバーをゆっくりと紹介した後、彼女は名残惜しそうにステージを去った。豊潤に広がり続ける音楽性、卓越した技術と奥深い表現力を備えたボーカル、そして、オーディエンスに対する溢れんばかりの愛情。3年半ぶりのアリーナツアーでSuperflyは、自らのアイデンティをしっかりと示した。“復活”ではなく、新たな表現の地平に立った今回のツアー、そして、来年1月15日にリリースされる4年半ぶりのニューアルバム『0』によってSuperflyは、次のピークに向かって進み始めることになりそうだ。
写真(Superfly Arena Tour 2019 “0” 2019.12.8 マリンメッセ福岡)=神藤剛/カワベミサキ
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。