Superfly『スカーレット』主題歌が運ぶ“心地よい朝” 主人公 喜美子と視聴者に寄り添う応援歌に
イントロを聴くだけで、脳内に心地よい映像が広がる音楽がある。差し込む温かな陽の光、カーテンをなでるふんわりとした風、青空を気持ちよく流れる白い雲……そんな清々しい朝の風景を彷彿とさせ、思わず新鮮な空気を胸いっぱい吸い込みたくなるような音楽が、歴代の朝ドラを彩ってきた。
9月30日からスタートした、戸田恵梨香主演のNHK連続テレビ小説『スカーレット』もまた、さわやかな音楽が気持ちのいい朝を演出してくれている。本作は戦後間もない時代から高度経済成長期にかけて、貧しいながらも、たくましく働き、女性陶芸家として波乱万丈に生きる主人公・川原喜美子の人生を描くオリジナルストーリー。がむしゃらに、明るく、懸命に生きようとする姿が、すでに多くの視聴者の心を掴んでいる。
物語のキーとなる陶芸にちなんで、オープニングではろくろの上で粘土が様々な形に姿を変える映像が流れる。1人で立ち上がったり、炎が燃え上がったり、人と人とが繋がってひとつになったり……一定方向に回るろくろを見ていると、決して巻き戻すことのできない時間の流れを見つめている気分になる。まるでその様子は、出会いと別れ、創造と破壊を繰り返す、人生や時代そのもののようだ。
そんなオープニング映像に乗せて耳に届くのが、Superflyの歌う「フレア」だ。Superflyといえば、「愛をこめて花束を」「タマシイレボリューション」「Beautiful」に代表されるように、力強く聞き手を鼓舞する楽曲が印象的だ。
越智志帆から放たれる歌声は、気持ちいいほど伸びやかで、“ここまで届いてほしい“という期待を遥かに超えてくる爽快感がたまらない。到達した瞬間、全身の毛穴がブワッと隆起し、強く抱きしめられたように息が詰まるような感覚になる。歌声が魂を揺さぶるというのは、こういうことなのだということを、教えてくれるアーティストのひとりだ。
だが、「フレア」を聴けば、これまでの突き抜けるような高揚感とは異なる、やさしいメロディや歌の表現になっていることに気づく。〈涙が降れば きっと消えてしまう〉そんな歌い出しは、まるで1人ひっそり泣いていたときに、そっと頬に手を添えられたような、包み込むような温かさ。轟々と燃えるような魂の歌から、ポワッと小さな火がついたようなやわらかな応援歌へ。Superflyの楽曲は、私たちの心に灯す炎の火力調整が自由自在のようだ。
もちろん、彼女の持ち味である伸びやかな歌声は健在だ。〈ほら 笑うのよ 赤い太陽のように〉の部分では、燦々と輝く太陽をめがけて「うーん」と背伸びをしたような気持ちよさ。軽くストレッチをした後に感じる、あの全身に血が巡ってポカポカとした気分になるのだ。いわば聴く準備体操。1日のスタートにもってこいだ。