映画『プロメア』楽曲解説 Superflyと澤野弘之の魂を燃やす音楽は作品をどこまで熱くしているのか
5月24日より公開となった長編アニメ映画『プロメア』の興行収入が、公開週8位と好調だ。
突如として、人類の一部が炎を操る人種・バーニッシュへ変異。それにより起こった未曽有の大災害「世界大炎上」で全世界の半分が焼失してから30年が経過した舞台で、「高機動救命消防隊バーニングレスキュー」新人隊員・ガロと、「マッドバーニッシュ」のリーダー・リオの熱き魂のぶつかりを描く本作は、TVアニメ『天元突破グレンラガン』(2007年4月〜9月)、TVアニメ『キルラキル』(2013年10月〜2014年3月)を手がけた監督・今石洋之(TRIGGER)と脚本・中島かずき(劇団☆新感線)タッグによる最新作だ。
超常能力者の出現とそれに揺れる社会や差別問題などをテーマに置きながらも、中島脚本お得意の、常識の壁をぶち壊しながら次第に物語が宇宙規模のスケールまで膨らんでいくワイドスクリーンバロックSFの構図と、今石監督による超絶怒涛のアクションシーンが、圧倒的なエネルギーの潮流となって観客をひとつの答えへと着地させる手腕がとにかく素晴らしい。鑑賞後には劇中でガロの言う「燃えて消すのが俺の流儀」という言葉と清々しさが胸に残った。
そんな本作の音楽を語るにあたり、まずは脚本を担当した中島かずきが座付き作家を務める「劇団☆新感線」について少し触れておきたい。
劇団☆新感線は1980年の旗揚げから、つかこうへい作品のコピー劇団として人気を博した後、84年の『宇宙防衛軍ヒデマロ』よりハードロックやヘヴィメタルをフィーチャーしたオリジナル作を発表するようになる。中島が参加したのは85年から。現在でも再演される代表作『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』などを生み出し、派手な殺陣とヘビーなロックサウンド、歌舞伎の見得を取り入れた粋なセリフの応酬など、独特ながらスピード感と迫力のある舞台はあっという間に小劇場界で話題となり、現在に至るまで人気を博している。
一方『プロメア』の劇伴を担当しているのは、TVアニメ『機動戦士ガンダムユニコーンRE:0096』(2016年4月〜9月)やTVアニメ『進撃の巨人』(2013年4月〜)などのを手がけてきた澤野弘之だ。澤野の音楽は重厚なロックとオーケストレーションの融合を得意としており、これが劇団☆新感線の特性と合致することからも、中島脚本作品とは抜群の相性を見せることは、前作『キルラキル』でも証明済みではあるが、今作はより相性が際立っているように思えた。
「PROMARETHEME」で渦を巻くような管弦楽とボーカルのうねりがドラマティックにストーリーを盛り上げるだけでなく、「GAL-OTHY-MOS」では「ヨナ抜き音階」やフルートを尺八風に織り込むなどして日本調なメロディを聴かせ、日本の火消しが使用する「纏」を模した武器「マトイテッカー」を振りまわすガロの「火消し魂」を明確に表現している。ワイドスクリーンバロック物として、よりハチャメチャ感が強かった『キルラキル』と比べて本作の方がキャラクターの心の機微に触れることが多い分、抑揚がついているためより多彩な表現を感じられたことは大きかったかもしれない。「燃焼ING-RES9」「Gallant Ones」を聴いただけでも蘇ってくるクライマックス感は、アクション、言葉、音楽が三位一体となって観客の記憶に刷り込まれている何よりの証拠である。