BABYMETALとBring Me The Horizon、現代におけるメタル界の異端児が共演を果たした意義

BABYMETALとBMTH、共演の意義

 BABYMETALの日本公演にBring Me The Horizonがゲストアクトとして出演すると発表されたとき、深く納得した。それは今世界で注目を浴びているバンドだからだとか、お互い親交ある間柄だとか、そもそもフロントマンのオリヴァー・サイクスがBABYMETALのファンであるとか、そういうことではなく、現在のロックシーンにあえて疑問を投げかけながら活動している2アーティストが揃うという意味でだ。

 言わずもがな、BABYMETALはこれまでメタルに新風をもたらし、あらゆる可能性をも提示してきた。さまざまなゲストアーティストを迎え、彩り豊かな楽曲を収めた最新作『METAL GALAXY』は、新たにメタルを再定義するかのごとく、保守的な音楽ファンに投げかけるアンチテーゼのようにも思えた。かたや、Bring Me The Horizonはデスコアという出自ながら、デジタルサウンドを積極的に導入したりと、時流を見据えながら枠にとらわれない音楽性で頭角を現してきたバンドだ。今年頭にリリースされた『amo』に見る、メインストリームのポップミュージックにおけるトレンドの取り込み方は大胆不敵。「ロックよりもヒップホップ、EDM」と言われる昨今の音楽シーンの風潮を素直に受け止めながら、「ヒップホップ、EDMが最先端であり、今いちばんロックしている音楽だ」と、自らの音楽に落とし込んできたのである。

 そうした、形は違えど、現代におけるメタル界の異端児の共演が観られるのだから、面白いに決まってる。そんな想いで、『METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN』さいたまスーパーアリーナ公演の2日目を観た。

©Masanori Naruse

 「Ludens」でスタートした、Bring Me The Horizon。ダンサーを従え、ステージ後方の巨大スクリーンをフルに活用しながらのパフォーマンスは、そのスケールともに圧巻である。と同時に、積極的にポップのトレンドを取り入れてきたサウンドプロダクト同様、ロックバンドとしてのパフォーマンスのスタイルにも固執していないことをまじまじと見せつけられた。

 「MANTRA」をはじめとしたヘヴィなギターリフが作り出す分厚いサウンドの壁と、獰猛なドラムが嘶く強靭なアンサンブルでバンドとしての圧倒的な強さを示すものの、「medicine」のロックとしての主張がありながら、あたかもトラップ使いのDJが操っているような“今どき”なサウンドを耳にすると、トレンドを“取り入れた”という安易な解釈ではなく、“飲み込んだ”という表現こそ相応しいと思うのである。それを裏付けるように、後方スクリーンに終始映し出されていたVJ演出は、シュルレアリスムな不気味さを感じさせながらも、一貫して「破壊と再生」を繰り返しているように思えた。

 「Drown」「Throne」の畳み掛け。オリヴァーが客席に降り、アリーナ席、1階席まで練り歩くアグレッシブさを見せ、大合唱が巻き起こる。会場内全員を座らせてからの一斉ジャンプで熱気は最高潮に達し、イギリスの異端児は満足気にステージを降りた。

 Bring Me The Horizonの熱量を受け取ったBABYMETALは、「FUTURE METAL」が荘厳に響く中、宇宙を旅していく宇宙船の映像ではじまった。SU-METAL(Vocal & Dance)、MOAMETAL(Scream & Dance)、そしてアベンジャーズを加えたトライアングルがステージに現れる。「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」のユーロビート調のリズムも、神バンドの演奏で聴くと音源とはまた違うビートに聴こえてくる。90年代のCDバブル時代を想起させるビートが今こうして、当時を知らない彼女たちによって、最新型のメタルナンバーとして打ち鳴らされている。

(写真=Taku Fujii)

 畳み掛けるような「ギミチョコ!!」で早くもフロアはサークルモッシュが複数巻き起こり、つづく「Elevator Girl」ではトライアングル型のステージとバックスクリーンが連動し上下するエレベーター演出に目を奪われる。「Starlight」で飛び交う無数のレーザー、「Kagerou」で噴出される火柱……楽曲に合わせてステージ上で繰り広げられるひとつひとつの演出が美しくもあり、激しくもあり、世界感を色濃くする。

 曼荼羅模様の映像とともにエスニックな香りを漂わせる「Shanti Shanti Shanti」で、SU-METALにある和心を強く感じた。日本民謡にも通ずる土着的な節回しを彼女の歌に感じたのだ。「メギツネ」然り、BABYMETALには和の童謡的要素の楽曲も存在しているが、このバングラビートの中にそれを感じるのだから妙味である。見方を変えれば、こうした滲み出る和情緒こそが、今や世界が羨むBABYMETALの魅力のひとつになっているのかもしれない。

 『METAL GALAXY』が全米ビルボードチャート「Billboard TOP 200」で日本人アーティストとして史上2番目となる13位を獲得したことも話題となった。これまでも数々の海外大型フェス出演など爪痕を残してきたわけだが、記録として、名実ともに世界的なアーティストとなった。その人気を裏付けるようにアメリカでは初のアリーナでのワンマン公演を大盛況に終えたばかり。本公演もワールドツアーの日本凱旋公演という位置付けである。そうした経験がメンバーのパフォーマンスに自信と余裕として表れているように見えた。同時に、それらで得た手応えを、日本のファンに見せられることの悦びを噛み締めていたように思えたのは気のせいではないだろう。そのくらい満面の笑みを浮かべながらパフォーマンスしていた3人の姿が印象的でもあった。

 BABYMETALのアンセム「Road of Resistance」。場内いっぱいに力強いシンガロングが巻き起こった。最後の一節〈Resistance〉、SU-METALのロングトーンは天井を突き抜けるほどに尖鋭で力強く、歌い切ったあと、彼女の満足気な表情が印象的だった。

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