アンジュルムを象徴する“めまぐるしい変化” 二期生が育んだグループの輝き
スマイレージ時代には試され続けていた二期メンバー
今年6月、グループの象徴になっていた和田の卒業で“第2章”へさしかかったアンジュルム。その歴史をたどると、当初は和田、福田花音、前田憂佳、小川紗季の4人からなるスマイレージとして2009年4月に結成するも、二期メンバーの加入や前田、小川の卒業を経て、2014年12月にグループ名を改称。直前に三期メンバーとして室田瑞希、相川茉穂、佐々木莉佳子が加入して以降は毎年、現在に至るまで新メンバーの加入を繰り返しているなど、端的に振り返ってもまさに“激動”と呼ぶのにふさわしい。
なかでも二期メンバーたちは、和田と共にグループの変化を如実に味わってきた。そもそもはグループのメジャーデビュー1周年を境にしたオーディションにより、サブメンバーとして加入した竹内、中西、勝田、田村の4人。彼女たちが初めて参加したグループのメジャー7thシングル『タチアガール』には、じつは、同時期に加入した小数賀芙由香も参加していたが、彼女が病気を理由に早期で離脱した経緯もあった。
その後、全国各地の様々な場所で自分たちの笑顔をケータイで撮影してもらい、ネット上にアップしてもらう「笑顔うpキャンペーン」を経て正式メンバーに昇格した4人。しかし、なおもまだ順風満帆とはいかなかった。
アンジュルムが、アイドルグループの試金石ともいわれるステージ・日本武道館での公演を達成したのは2014年7月。二期メンバーたちがその日までに参加したシングルの枚数はメジャー16thシングル『ミステリーナイト!/エイティーン エモーション』までのじつに10枚を数えていて、なおかつ、日本武道館までの道のりには全国47都道府県のライブハウスを巡るツアーもあった。
また、そのツアー自体もグループにとっては重要な分岐点だった。グループが改称する直前、和田がスマイレージのメンバーとして最後に綴った2014年12月のブログには「ツアーは出来なくなってしまい、、やっとやっと、今年の春からツアーが出来るようになりました」(原文ママ)と彼女の悲願がにじんでいたが、そこへ至るまで彼女たちは常に試され続けていた(参考:和田彩花 オフィシャルブログ)。
じつは、冒頭にある田村の名言「スマイレージはいつもこうだ…。」は、そのさなかで発せられたものだ。きっかけは、2013年11月に開催された地域のよさを再認識するためのプロジェクト“SATOYAMA & SATOUMI movement”のイベント。当時、デビューまもなかったハロプロのグループ・Juice=Juiceとのクイズや料理の対決に負けた田村が、スケッチブックに手書きで描いた自虐的なメッセージがまさにそのフレーズで、改称した今なおグループを象徴する言葉として語り継がれている。
後輩たちが育つ環境を自然と作り上げた和田と二期メンバー
中西の卒業に少なからぬ寂しさを覚えるのは、やはり、スマイレージからの空気感を継ぐのがいよいよ竹内のみとなるのも大きい。しかし、アンジュルムは三期メンバーの加入や改称を経て以降、グループとしてより強くなっていった。
改称後の第一弾となった2015年2月リリースの『大器晩成/乙女の逆襲』から勢いを加速させたグループは、道中で福田、田村の卒業を経験しながらも、今日に至るまで和田や二期メンバーを中心に新メンバーを温かく迎え入れパフォーマンスを磨いてきた。今となっては毎年のようにツアーを行い、日本武道館公演を実現できるまでに成長。対外的にも『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の常連になりつつあるなど、年々、彼女たちの努力が実を結び実力が評価されるようになっていった。
その過程でグループをけん引してきたのが、まさに和田や二期メンバーたちだ。はたから見た印象としては、メンバーを泳がせながらリーダーとしての存在感を発揮してきたのが和田。現リーダーの竹内は、ときにはオラつきながらも後輩たちにも気軽にイジらせるような空気を作り、中西は、母親のような笑顔で常にメンバーたちがじゃれ合うのを見守ってきた。
そして、幼少期からの舞台経験により持ち前の歌唱力や表現力を背中で見せつけた田村がいて、パフォーマンスは“省エネ”と評価されながらも影ではグループを取り仕切る裏番長として活躍していたのが勝田で、自然と後輩たちが成長できて、なおかつ活動を楽しめるような環境を彼女たちが作らなければおそらく、今のアンジュルムはなかった。
さて、ここまでに和田や勝田の卒業が相次いだ一方で、グループは今年新たにハロプロ研修生出身で即戦力として期待される橋迫鈴を迎え入れた。さらに、卒業を控える中西と共に6月からは川村文乃もサブリーダーを務めていて、12月の豊洲PIT公演以降は、現リーダー・竹内との二人三脚でどのような舵取りをするのかも期待される。
彼女たちの楽曲「人生、すなわちパンタ・レイ」は“万物は流転する”をテーマとしているが、めまぐるしい変化はアンジュルムの象徴でもある。田村の残した名言「スマイレージはいつもこうだ…。」もとい「アンジュルムはいつもこうだ…。」はまさに、常に試されながらも成長し続けるグループの姿を暗示していたようにも思えるが、彼女たちはこれからもきっと、何事にも耐えられる強さをもってステージで輝き続けるはずだ。
■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。