甘い暴力「ちゅーしたい」、POIDOL 絢瀬ナナの“踊ってみた”も TikTokはV系の新たな入り口に

TikTokはV系の新たな入り口に?

 投稿された動画の中には、バンドのことは知らずにBGMとして使用したケースも少なくないだろう。15秒に切り取られた楽曲がTikTokで人気になっていくのに、複雑な感情を抱くファンも多いかもしれない。しかし、これが新たなプロモーションに繋がる可能性は大いにある。実際、2010年に発売した倖田來未の「め組のひと」(ラッツ&スターのカバー)はTikTokでバズったのをきっかけに、圏外から再度LINE MUSICなどのチャートにランクインした。(参考:倖田來未「め組のひと」、なぜ女子高生の間で再ブーム? “Tik Tok映え”する懐メロを考察)サブスクリプションがすでに当たり前のツールとして浸透している今、新たな音楽に触れるハードルは低いはずだ。もしもTikTokをきっかけにバンドに興味を持ち、ライブに足を運ぶ人が現れたら、スマホの中だけで楽しんでいた音楽が、目の前の現実に変わり、生の体験を得ることで、大きな感動を味わえるかもしれない。ヴィジュアル系バンドが音楽番組へ出演する機会は減り、ヴィジュアル系専門の音楽雑誌も減りつつある昨今。シーンの現状が外側から見えにくくなっている時代だからこそ、TikTokも新たな入り口の一つになってほしいと思う。

 最後に、ヴィジュアル系がTikTokでバズった例としてもう一つ紹介したいのは、POIDOLの絢瀬ナナ(Vo)。彼は先に挙げたBGMとして人気になった例とは異なり、菅田将暉「まちがいさがし」の“踊ってみた”動画が高く評価された。絢瀬ナナは元プロダンサーであることを公言しており、自身のライブでもダンスを披露している。クオリティの高い完成されたダンス動画は、TikTok内で1万5千件以上のいいねを獲得。また、動画のコメント欄では「女子より肌綺麗!」「顔小さいなぁ」と、ビジュアルのレベルの高さも話題となった。まさに、TikTokの動画をきっかけに多くの人に彼自身の魅力が伝わった一例と言えるだろう。メイクや衣装などにもこだわり、中毒性の高い楽曲を世に送り出すヴィジュアル系バンド。その両方の特徴に手軽に触れられるTikTokは、シーンを超えた良いプロモーションツールになり得るかもしれない。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

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