NOT WONKは若い世代の新しいヒーローになる パンクバンドの現在形を石井恵梨子が観た
地元の景色や生活を歌う「The Bare Surface, I’ve Longed For You」の開始前、加藤はMCで12月に苫小牧で開催するワンマンライブ『YOUR NAME』について語っていた。いわく、今回から関わる人が増えて実際に観客も増えたこと。だんだん顔も名前もわからなくなってくるけれど、地元のワンマンくらいは全員の名前を覚えようと思っていること。チケットはすべて自分で直接送ること、などなど。既存のかたちに乗っからないインディペンデント精神には、彼の強い意思と誠実さが表れていた。曲が良く、アイデアが素晴らしくて、浮かれたところがひとつもない。まったく今のパンクスとして理想的である。
冒頭に書いたとおり、アンコールは一転してド直球のパンクロック3連発。この日初のダイバーも飛び出して、そうだよなぁと納得する。こんなバンドを目の前にすれば衝動は抑えられない。ギターは確かに使い古された楽器かもしれないが、どう魅せるか、何をヒントにするかで、それは再びキラキラと輝き出すのだ。NOT WONKをきっかけにバンドを組みました。今後、そんな声が全国からどんどん出てくるだろう。加藤修平は若い世代の新しいヒーローになる。なって欲しい、ではなく、なると断言できるライブだった。
(写真=桑島智輝)
■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。