大石昌良が振り返る「ようこそジャパリパークへ」のすべて 「すごいアニメドリームだった」

大石昌良語る「ジャパリパークへ」のすべて

『けものフレンズ』に携われたことが音楽人生の中で一番の変革期

——実際に社会現象を巻き起こすほどのヒットになって、大石さんには何か変化をもたらしましたか?

大石:単純に仕事が増えましたね。

——あはははは。

大石:たくさんお声がけをいただくことが増えましたし、テレビの音楽バラエティ番組にも作曲家として呼ばれたりもして。もうガラッと変わりましたね。自分の音楽人生の中で一番の変革期だったと思います。『けものフレンズ』に携われたことが。

——これまでと変わらないクリエイティブをしていても、周りの扱いは劇的に変わったわけですよね。

大石:そうですね。だからこそ、僕自身はマイペースを保とうってずっと心がけてて。でもまわりが変わるっていうことは、環境が変わるっていうことなので、環境が変わるとその人は絶対に変わるじゃないですか。だけど、僕は先生と呼ばれるにはまだ経験も全然ないですし、こそばゆい感じもするので、ちゃんと自分を保つために、自分のチームの環境だけは変えないように気をつけてて。これだけのヒットの後で、その次の作品が作れない、軽いイップス状態になるのが、クリエイターとして一番やっちゃいけないことなので、それだけは避けようと思って。だから、『けものフレンズ』がヒットした後に一番最初にしたのが、チームでのスケジュール管理についての打ち合わせだったんですよ。「この後仕事が増えていくと思うので、ちゃんとマイペースを保てるようなスケジューリングで、まずは、我々、断ることを覚えましょう」っていうガイダンスを打ち合わせの中でして。

——ヒットソングって重いですか。

大石:怖いですよ。その裏には恐怖の側面がありますね。ヒャダインさんに「大石さん、これって、ヒットソングを書こうと思って書いてないでしょ。勝手に出てきたでしょ。あと、すごいことしたって思ってないでしょ」って言われて。その言葉が一番印象に残ってるんですけど、確かにって思ったんですよ。それって自分を分析しきれてないっていうことだなって思ったので、その時に、自分の中で警鐘が鳴って。次のヒットソングを作るためのフォーマットがまだ準備できてないってことだから、まわりにちやほやされて、先生扱いされてると、多分、痛い目を見るなって思ったんですよね。だから、ヒットするっていうことは、自分の評価の的が絞られるっていうことでもあって。そこが100点の最高点として、次の楽曲が90点とか、みんな、勝手に点数をつけてくるけれども、それに一喜一憂していても仕方がないっていうのも、ちゃんと自分の中で意識しないといけない。なおかつ、いいものを作るっていう。自分のような者が言うのはおこがましいのですがそれはヒットを抱えた人の難しさかなって。今までは頭ではわかっていたけど、ちゃんと目の前に、その質量を持って自分が実感するって思ってなかった。ちょっと踏み違えたら、すぐに闇の中に落ちちゃうような綱渡りだなって、今でも思ってますね。だから、めちゃくちゃ嬉しかったけど、怖さもありましたね。

 『鳴り止まないシンフォニーなんだな』っていうのが伝わったらいいな

——そんなプレッシャーも感じる中で、続投となった『けものフレンズ2』の主題歌「乗ってけ!ジャパリビート」はどう考えてました?

大石:1期があれだけヒットして、「ようこそジャパリパークへ」もたくさんの方に聴いていただいたので、考え方は2パターンあるなと思って。「ようこそジャパリパークへ」をさらにブラッシュアップしたような楽曲がAパターン。もう1つは、全く別のアプローチで作っちゃおうっていうBパターン。実はAパターン、Bパターン、両方出してるんです。で、選んでいただいたんですけど、1対1で意見が分かれちゃった。最終的には僅差でBパターンになった感じですね。僕としては、2期も楽しんでいただけるようにっていう気持ちで、ひたむきに一生懸命に作りました。少しでも、作品のお力になれたらいいなっていう思いは今でも変わらないですね。

——別のアプローチの方ですよね。

大石:そうですね。2期のオープニングに関しても、パークのテーマソングを作るっていうところは一貫してイメージとしてあったので。それは1期とは全く変わらず、テーマパークのテーマソングが2〜3曲あってもいいじゃないっていう感じで作りつつ、『けものフレンズ』自体が社会現象になったっていうことは、お茶の間でもサーバルちゃんを知ってる人がいるっていう状態になったので、より一人一人のキャラクターをさらに紐解くようなテーマソングができたら面白いんじゃないかっていう着想で作りました。

——楽曲の後半には「ようこそジャパリパークへ」のイントロがうすーく入ってますよね。

大石:あえて入れました。同作曲者で、同アレンジャーだからこそ入れられる、1つの力技だと思ったので。悪戯心にちょっと毛が生えた感じですかね。よく聴いたら聞こえてくるし、ちゃんと、『鳴り止まないシンフォニーなんだな』っていうのが伝わったらいいなと思って。1つのエモい部分として、皆さんに捉えていただけたらいいなと思ってます。

——2期のオンエアが終わりました。

大石:けものフレンズ2はもちろん、どの作品に対しても愛を持って楽曲を作っているので、いずれ、正しい評価がされたり、「やっぱりよかったんだ、この曲」って思っていただけることがあるといいな。そういうことを信じて、音楽人としてやっていけたらいいなと思いますね。でも、良くも悪くも、すごいアニメドリームだったなって思います。もちろん、これからも続いていくし、僕も発注があればいつでも出動したいなと思います。

——セルフカバー第2弾となる『仮歌Ⅱ』には「乗ってけ!ジャパリビート」が収録されてますね。

大石:デモバージョンじゃなく、自分なりにちょっと変えてます。「オーイシ、またひとり芝居するの?」みたいな雰囲気になってるんですけど、聴いたらわかります。すごくジャズっぽくなってますし、台詞にメロがついて、よりミュージカルっぽい感じになってます。また別の曲を聴く感じで聴いていただけたらと思いますし、7月にはソロツアーもあって。カタカナのオーイシが『仮歌』シリーズでZeppをやるっていう、とんでもない冒険に出てますので、フレンズの皆さんに集まってもらえたらいいなと思いますね。


(取材・文=永堀アツオ、写真=はぎひさこ)

■リリース情報

『ようこそジャパリパークへ ~こんぷりーとべすと~』[生産限定]
アーティスト:けものフレンズ
発売日 :2019年5月29日(水)
発売元:株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
価格:¥3,000+税 品番
CD特設サイト
<CDトラックリスト>
01.ようこそジャパリパークへ
02.ようこそジャパリパークへ(TV size ver.)
03.ようこそジャパリパークへ(PPP ver.)
04.ようこそジャパリパークへ(サーバル ver.)
05.ようこそジャパリパークへ(アラフェネ ver.)
06.ようこそジャパリパークへ(プリンセス ver.)
07.ようこそジャパリパークへ(コウテイ ver.)
08.ようこそジャパリパークへ(ジェーン ver.)
09.ようこそジャパリパークへ(イワビー ver.)
10.ようこそジャパリパークへ(フルル ver.)
11.ようこそジャパリパークへ(Xmas ver.)
12.ようこそジャパリパークへ(PPP with マーゲイ)
13.ようこそジャパリパークへ(with かばん)
14.ようこそジャパリパークへ ~もりのおんがくかい~
15.ようこそジャパリパークへ ~orgel ver.~
16.ようこそジャパリパークへ -off vocal ver.-
17.ようこそジャパリパークへ(ただいま ver.)

BONUS TRACK
18.ようこそジャパリパークへ(おーいしおにいさん仮歌 ver.)
※おーいしおにいさん仮歌 ver.はカバーアルバム『仮歌』収録音源。

<DVD収録映像>
01.ようこそジャパリパークへ -TVアニメ「けものフレンズ」アニメOP映像-
02.ようこそジャパリパークへ -TVサイズショートPV-
03.ようこそジャパリパークへ -カラオケDAMオリジナル映像-
04.ようこそジャパリパークへ -Xmas ver.PV-
05.ようこそジャパリパークへ -どうぶつビスケッツ×PPPとフレンズキッズダンサーズ-
06.ようこそジャパリパークへ -舞台「けものフレンズ」-
07.ようこそジャパリパークへ -「ビクターロック祭り2017」2017.3.18 @幕張メッセ-
08.ようこそジャパリパークへ -「ブシロード10周年ライブ」2017.4.30 @横浜アリーナ-
09.ようこそジャパリパークへ -「けものフレンズ LIVE」2017.9.16 @豊洲PIT-
10.ようこそジャパリパークへ -「ニコニコ超パーティー2017」2017.11.3 @さいたまスーパーアリーナ-
11.ようこそジャパリパークへ -「ニコニコ超会議(超音楽祭)2018」2018.4.28 @幕張メッセ-

BONUS MOVIE
12.ようこそジャパリパークへ -初リリースイベント 2017.2.25 @お台場-

※BONUS MOVIEは映像のみ・音声はCD音源。

(C)けものフレンズプロジェクト

※各配信サイトはこちら

■関連リンク
『けものフレンズ』公式ホームページ
『けものフレンズ』公式Twitter
TVアニメ『けものフレンズ2』公式Twitter

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