欅坂46、3周年ライブの背景にあった対照的なテーマ グループの基調を提示した日本武道館公演

欅坂46、武道館で提示したグループの基調

 4月4日から6日に大阪、5月9日から11日に東京で『欅坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』が開催された。今回の特筆すべき点は、2つの会場でセットリストや演出をがらりと変えて、全く異なる世界観のライブを短期間で実現させたことだろう。端的に言えば、デビュー3周年を祝ったのが大阪、3年間で築き上げた世界観を見せつけたのが東京であった。

欅坂46

 大阪会場となった大阪フェスティバルホールでは、多様なユニット曲を経由しつつ「危なっかしい計画」や「W-KEYAKIZAKAの詩」といった楽曲で締めくくるお祝いムードのライブ。筆者も都内の映画館にてライブビューイングで鑑賞したが、メンバーの笑顔が印象的な明るい公演であった。しかも、会場の収容人数は2,700人という超高倍率。グループの人気には釣り合わない小規模開催に疑問を抱いたファンもいたことだろう。ただ、これについては思うところがないわけではない。

 話は2017年末まで遡る。それはクイック・ジャパンの特集でメンバーに取材したときのこと。それまで頻繁に行っていたブログの更新が急に減り、会ってみるとどことなく暗い表情を浮かべていた当時の上村莉菜に、欅坂46でどんなライブがしてみたいか尋ねてみたところ、少考した後に「ファンと近いライブがしたい」と返ってきたことがあった。普通、伸び盛りのグループのメンバーがそんなふうに問われたらとりあえず大きな夢を語ってみるものだが、彼女は違った。悩みながら、しかし、はっきりと意志を持った目つきでそう答えたのを今でも鮮明に覚えている。デビューしてすぐに爆発的な人気を"得てしまった"自分たちを、ある意味冷静に見た、地に足の着いた回答だったのだと思う。

 そういう意味では、今回のように比較的小さな会場でライブを開催するというのは、彼女たちにとって"忘れてきたものを取りに行く”ものだとも言える。東京会場となった日本武道館もグループにとっては思い出深い場所で、2018年の1月から2月にかけて予定されていた(急遽中止された)3日間のライブのリベンジとも言える。つまり、周年記念祭でありながらもその裏には多くのテーマが潜んでいるイベントだったのだ。

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