自ら生み出し、他も支えるーー創造性豊かな凄腕ミュージシャンの活躍から見る音楽シーンの現在

 2018年の動きをさらに書き連ねると、星野源の「アイデア」で大きな役割を果たしたSTUTSも自らのソロ作『Eutopia』で高い作家性を示していたし、ceroのサポートを務める3人の中で、小田朋美はCRCK/LCKSとして、角銅真実と古川麦はソロとして、それぞれ素晴らしい作品を発表し、角銅も参加した石若のソロもまた非常にユニークだった。このように、本連載では毎月のリリースやライブをサポートの側にスポットを当てながら紹介し、ピープルツリーを広げることによって、現在の音楽シーンの動きを追っていきたい。

 1月リリースの作品を振り返ると、『バズリズム02』の「今年コレがバズるぞ!BEST10」で一位を獲得し、すでに実際バズっているKing Gnuの『Sympa』が印象的。そもそも現在様々なシーンで活躍しているプレイヤーの傾向のひとつが、“ジャズ”を軸としたセッションカルチャーの出身ということで、King Gnuのメンバー自身がかつてそういった場所に身を置いていたからこそ、プレイヤビリティの高さが評判を呼んだという側面は見逃せない。

 そもそもKing Gnuの前身であるSrv.Vinciは、中心人物の常田大希と、同じ東京藝大出身で、交流のあった石若とで始まっていて、石若は常田のソロプロジェクトDaiki Tsuneta Millennium Paradeの『http://』にも参加。そして、同じ作品に参加していたのがWONKであり、『Sympa』には鍵盤の江崎文武と、ボーカルの長塚健斗が参加。特に、江崎のピアノは作品の重要な構成要素となっていた。

 須田景凪の1st EP『teeter』も話題の一枚。もともとバルーン名義でボカロPとして活動し、代表曲の「シャルル」はボカロ好きなら知らない人はいないくらいの有名曲だが、須田名義では自ら歌い、バンドサウンドを展開している。サポートメンバーとして、ギターには、DAOKOの作品やライブに参加するなど、活躍の幅を広げているAwesome City Clubのモリシーが、ベースには村田シゲ(□□□ほか)や長島涼平(the telephonesほか)といった実力者が名を連ねる。

 中でも注目なのがドラムの堀正輝(ARDBECKほか)で、彼は米津玄師のサポートも務める人物。打ち込みのトラックと生バンドの関係において、重要なのはやはりビートであり、ボカロからバンドへという道を切り開いた先駆者である米津のキャリアに貢献してきた堀の存在は、須田にとっても非常に大きいはず。なお、ライブではモリシーと堀に加え、ボカロPの有機酸(神山羊)がベースを担当しているのも面白い。

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