自ら生み出し、他も支えるーー創造性豊かな凄腕ミュージシャンの活躍から見る音楽シーンの現在

 1月に行われたライブの中で印象的だったのは、1月24日に渋谷WWWXで観た江沼郁弥。plenty時代から一転、ほぼ一人で作り上げたソロ作『#1』がインディR&B以降の空気感を纏っていた。江沼のライブでサポートを務めるのは、こちらも1月に発表した『Vi』のミニマルメロウな世界観が早耳たちの心をつかんだ4人組・木のメンバー。ステージ中央にボーカル/ギターの江沼、上手にドラムのナイーブ、下手にキーボードのオヤイヅカナルが並び、アトモスフェリックなうわものと、緻密かつアグレッシブなドラムが江沼の歌を下支えしていて、まだライブを始めて数回とは思えない完成度を見せていた。

 その翌日、1月25日には渋谷TSUTAYA O-EASTでKID FRESINOのリリースパーティー。DJとバンドを交互に迎える形で進行し、バンドには前述の三浦、石若、斎藤のほか、佐藤優介(カメラ=万年筆)と小林うてなという『ài qíng』の参加メンバーが集結した。KID FRESINOと、次々に登場するゲストのラッパーたちとともに、バンド全体で変幻自在のグルーヴを紡ぎだし、オーディエンスを魅了する様は流石の一言。特に、石若は数曲でDJとともにプレイし、マシンビートと生々しいドラミングを使い分けて、プレイヤーとしての実力を見せつけていた。

 石若は昨年くるりのライブとレコーディングにも参加し、弓木英梨乃のソロプロジェクト・弓木トイに参加することも発表されている。石若はもちろん、弓木もまたギタリストとして、KIRINJIや吉澤嘉代子、のんなど様々なアーティストに関わる凄腕プレイヤーであり、今後もその動向に注目していきたい。

※江崎文武の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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