VERBAL&☆Takuが語る、LDHのプラットフォーム構想 日本発コンテンツ海外展開に必要なPRとは

 もちろん、これまで日本のアーティストなどが全米進出を目指したケースはある。宇多田ヒカルは2004年、アメリカのトッププロデューサーを集結させ、Utada名義で『EXODUS』をリリースし、待望の全米デビューを果たした。しかし、結果はビルボードチャート初登場160位と、決して芳しいとはいえないものだった。ところが、アメリカで宇多田ヒカルの人気がなかったかというと、そんなことはなく、☆Takuは「ローカライズの仕方が間違っていた」と推測している。「向こうの宇多田ヒカルさんのファンは、PS2用ゲームソフト『キングダム ハーツ』の主題歌だった『光』で、彼女の魅力に気づいている。日本語と英語が織り混ざった歌や、J-POP特有のサウンドにこそ惹かれていたわけで、向こうで主流となっている音楽性に合わせる必要はなかった」(☆Taku)。実際、宇多田ヒカルが2017年にリリースした配信曲「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)は、全米のiTunes総合ページで日本人アーティスト最高位となる2位にランクインしている。

 このような現状を鑑みて、☆Takuは改めて、海外進出するためには「PRプラットフォーム」の発想が大切だと続けた。「昔はマスで同じメッセージを届ければ、みんなが振り向くという状況が日本にあったけれど、それは当時の人々の選択肢が少なかったから。今は趣味嗜好が多様化していて、今日だってあなたの知らないアーティストが武道館を満員にしているかもしれない。そういう状況だからこそ、みんなに無理に好きになってもらうのではなく、すでにそのコンテンツを好きな人々のファンベースを探して、彼らの持っているコンテクストやパッションを理解した上でPRするのが有効。その方法論は海外でも通用するはず。ファンベースの中には、必ずインフルエンサーもいるから、そこから広げていくこともできる」また、VERBALは、「今の日本はユーザーのリテラシーも上がっていて、人気のある有名人が着た洋服がそのまま売れるほど、単純なマーケットではなくなっている。でも、日本はいい意味で複雑だからこそ、次のチャンスがある」と述べた。日本の複雑なマーケットが生み出した多様なコンテンツの魅力を、海外のファンベースに対してうまく伝えることができれば、それはそのまま多様なビジネスチャンスに繋がっていくということだろう。

 ☆Takuは『OTAQUEST』について、「今はまだスタートしたばかりで、情報が少なく、しっかりとしたマーケティングができていない。音楽でいうと、この曲は鉄板だとか、この曲はこの層に響くとかがわかっていない状況。でも、これから先、各地でイベントを行って発展していけば、OTAQUEST自体が日本の他の企業にとってのマーケティングツールとなっていくかもしれない。基本的に日本のカルチャーであれば、OTAQUESTに集まる人々に受け入れられる可能性がある。実際に韓国では、K-POPと辛ラーメンを一緒にPRして、韓国カルチャーが好きな層に訴求することに成功している」と、今後の可能性を述べた。さらにVERBALは、「日本はまだ本気を出していないと思う。例えばアニメは日本独自のカルチャーとして人気が高い、大きな資産だけれど、複数の企業がコラボレーションして全米展開できているものはほとんどない。アニメは、音楽からファッションまで、様々なものを繋ぐことができる魔法のボンドのようなもの。みんなで力を合わせればチャンスはある」と続け、訪れたビジネスパーソンたちに、企業の壁を越えたコラボレーションの重要性を訴えた。

 m-floはかつて、ボーカルのLISAが脱退した後に、アメリカのプロデュースグループであるThe Neptunesからヒントを得て、毎回異なるボーカリストを迎えて楽曲をリリースする"m-flo loves Who?”という活動形式になり、日本の音楽シーンにフィーチャリングやコラボレーションという概念を浸透させることに成功している。そうした経験を持つ彼らの発想こそが、日本のコンテンツを世界に発信していくための大きなヒントとなるのかもしれない。

(取材・文=松田広宣)

■関連情報
『OTAQUEST』サイト(12月12日に正式ローンチ予定)

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