グラミー最優秀新人賞は誰の手に? カーディ・Bらが除外されたルールの“問題点”とは

グラミー新人賞ルールの問題点とは?

ブレイクスルー時期:ポスト・マローン&カミラ・カベロ

 ポスト・マローンが失格となった理由は「対象期間以前から注目を浴びていた」ためと伝えられている。2017年施行の新ルールでは「対象期間中のブレイクスルー」が必須とされている(参照:BillboardGRAMMY.com)。確かに、マローンは2017年10月以前から売れていた。2016年リリースの「Congratulations」 は全米ビルボード総合ソングチャートHOT100で8位を記録している。元々ヒットしていた者は「新人」賞に適さない……ここまで聞くとそれなりに納得できるが、問題がある。2018年に最優秀新人賞を受賞したアレッシア・カーラにまつわる議論だ。彼女は、2015年のデビューシングル『Here』がHOT100で5位を獲得していた。チャート記録だけ見ても、マローンと同じく「期間対象前から売れている」のだ。何故、カーラはOKでマローンはNGなのか? ここが難題だ。「ブレイクスルーした時期」は、一体どうやって決めるのだろうか? 「新人部門は定量化が難しい」とされる大きな要因だろう。

 Varietyは、Fifth Harmonyからソロデビューしたカミラ・カベロも「グループ在籍時からヒットしていた」ことを理由に、ノミネートから除外されたと記している。AP NewsやPitchdorkはカミラ失格については報じていないため、他3人と比べると信頼性はやや低い。彼女がノミネートされるかも注目点だ。

受賞者予想

 グラミー賞の最優秀新人賞ウィナーは誰になるのか? まず、知名度の高いカミラ・カベロがノミネートされた場合は強力だろう。グラミー主要4部門は全ジャンルの専門家が投票するため、知名度が重要とされる。また、票田が大きいとされるカントリーやロックの系譜を持つアーティストは、それだけで有利とされる。ナンバーワンヒットを輩出した知名度、カントリールーツ、この2つを併せ持つメーガン・トレイナーは2016年度で見事本賞を受賞した。カミラの場合、作風がラテンやアーバン寄りであるため、メーガンほど「強力な下地」は持たないかもしれない。前述したケイン・ブラウンはHOT100で15位を獲得したカントリー歌手なので、候補に入れば票を掴むポテンシャルがある。

 新人賞ノミニーは、2019年より5人から8人に拡大する。有名メディアには、以下の候補が予想されている。デュア・リパ、エラ・メイ、ジョルジャ・スミス、H.E.R.、ジュース・ワールド、ビリー・アイリッシュ、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ、 Greta Van Fleetなど。サプライズノミニーがあるとしたら「Gucci Gang」がHOT100で3位を記録したお騒がせ10代ラッパーリル・ポンプだろうか。

 新人部門から除外されたカーディ・Bとポスト・マローンにしても、主要3部門の可能性は残っているため、まだまだ注目株だ。マローンは、グラミー賞のことを“つい気にしないふりをしてしまう中学時代の恋に似ている”というような表現で語ったことがある(参照:Billboard)。彼の初恋が実ることを祈ろう。

■辰巳JUNK
ポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマなど。 雑誌『GINZA』、webメディア等で執筆。
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