Mr.Children、26年間の歩みで導かれた一つの答え 全曲詩集『Your Song』から紐解く

 また、自分が何を言うかだけではなく、逆に相手に「言わせてみてぇもんだ」(『シフクノオト』)と歌ったり、「あんまり覚えてないや」(『HOME』)と曖昧に口にするなど、言葉をめぐっていろいろな態度を示してきた。プロの作詞家として多様な題材を多様に語る芸がありつつ、限られたことを主張するのではなく、考え悩み、時にはふざける姿をさらしてきた。硬軟をあわせもった普通の感覚だ。一つのところにとどまらないそんな歩みかたが、思い惑い、時にはいい加減になる普通の人々から広く共感を得てきたのだろう。

 最新作『重力と呼吸』の「皮膚呼吸」では〈自分探しに夢中でいられるような 子供じゃない〉と今の〈僕〉を歌っている。しかし、「海にて、心は裸になりたがる」なんて曲が収録されているくらいで、まだ落ち着いたわけではない。そして、かつての「名もなき詩」(『深海』)が〈いつまでも君に捧ぐ〉と締められていたのに対し、『重力と呼吸』の1曲目で全詩集の書名にもなっている「Your Song」では〈また時には同じ歌を口ずさんでたりして〉〈そう君じゃなきゃ/君じゃなきゃ〉と歌っている。こうしてMr.Childrenの曲は〈誰かにとっての「歌」〉になり、〈あなたが主役の、あなたの「歌」〉になろうとしている。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)、『戦後サブカル年代記』(青土社)など。

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