Mr.Children、26年間の歩みで導かれた一つの答え 全曲詩集『Your Song』から紐解く

 『深海』(1996年)になると、「シーラカンス」で海底に暮らす魚に思いを馳せ、「マシンガンをぶっ放せ」なんて物騒なタイトルで核実験の続く時代を憂う。「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」では、サブタイトルの通りユーモラスなところもみせる。「花 -Mémento-Mori-」で〈人生観は様々〉と歌っているが、様々な視点、様々な語調で作詞するようになる。

 社会問題への関心が強まったり、身近な題材の比重が大きくなったり、時期ごとに詞の傾向は移り変わっている。「いつでも微笑みを」(『IT’S A WONDERFUL WORLD』2002年)では〈悲劇の真ん中じゃ その歌は/意味をなくしてしまうかなぁ〉と歌の無力さについて触れ、「Any」(『シフクノオト』2004年)や「Wake me up!」(『HOME』2007年)では自分のことを時代のせいにする姿勢を指摘する。社会派として正義をふりかざすのではなく、迷いや甘さへの自覚も語るのだ。

 また、生真面目な恋愛に限らず、「LOVEはじめました」(『IT’S A WONDERFUL WORLD』)のおやじに買われて刺される少女の映画、「隔たり」(『I ♥ U』2005年)における0.05ミリの合成ゴムなど、ロマンチックではない性欲も描写する。

 『SUPERMARKET FANTASY』(2008年)というアルバムもあったが、Mr.Childrenはそれこそ雑多な商品が並ぶスーパーマーケットみたいに、歌でなんでも扱ってきたのだ。そして、同作には、〈言葉はなかった/メロディーすらなかった/リズムなんてどうでもよかった〉ところから音楽がわき上がっていく過程を歌った「声」が収録されていた。様々な題材を詞にしてきた桜井は、小器用にそうしているのではなく、なかなか言葉を発せられないもどかしさの地点へと、たびたび戻っている。「NOT FOUND」(『Q』2000年)の〈歌や詩になれない この感情と苦悩〉、「ポケット カスタネット」(『HOME』)の〈声になる前の優しい言葉〉などがそうだ。

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