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米津玄師、水カン、堀込泰行……山田智和監督のMVになぜ心揺さぶられる? 映像手法を考察

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 山田の作品は最近のものになればなるほど、映像的なエフェクトや最新のテクノロジーを振りかざすようなギミックが希薄になっている。それはつまり、山田の興味がキレイな映像や面白い映像を見せることではなく、人間そのもののリアルを描くことにあり、そこから滲み出る様々な感情が織りなすドラマを描くことにあるということだ。たとえば2012年のMV、[.que]meets one day diary「Time to Go remix」は、雨に濡れる東京の街をクルマの窓越しに捉えた作品だが、その主眼はクルマの窓の水滴越しに滲む街のネオンの映像的な美しさを描くことであって、人間ではない。この頃の山田にはまだそうしたタイプの映像作家になる可能性があった。だがその1年後に「47seconds」「A Little Journey」といった作品で、初めて自己の作家としてのテーマを見つけたということだろう。

[.que] meets one day diary – time to go remix

 illion × SPACE SHOWER TVのステーションID「Told U So」(2016年)は、当時注目の最先端テクノロジーだったVR技術を使った実験的な作品だが、主眼はむしろそこで歌い踊るillion(野田洋次郎)のしなやかな肉体なのである。

illion × SPACE SHOWER TV 「Told U So」ステーションID

 人間存在そのもののリアリティを骨太な映画的手法で切り取っていく山田監督の作風は、映像の奇抜さや目新しさに目を惹かれがちな今のMVにおいては異色と言えるかもしれない。「都市に於ける肉体の復権」をテーマに、現実という痛みをもって生々しい生の実感を得る、という作品を作り続けているのは『鉄男』や『野火』で知られる映画監督の塚本晋也だが、若い山田智和は怒りや痛みではなく、悲しみや喪失感をバネに、開かれた気持ちのいい場所へと飛躍しようとする。彼がMVやCMで得たスキルやノウハウをもって、新しい劇映画の世界へと飛び出していくのも時間の問題だろう。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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