米津玄師、ソフトバンクCM起用でさらに国民的アーティストへ 「Lemon」に宿る普遍性と新しさ

 米津玄師の「Lemon」がソフトバンクの新テレビCMシリーズ「白戸家ミステリートレイン」に起用され、再び注目を集めている。「Lemon」が使用されているのは、ソフトバンクの新料金サービス「ウルトラギガモンスター+」のCM「白戸家ミステリートレイン『リョウマの事情聴取』篇」。このCMのストーリーは、白戸家が家族旅行で乗車した豪華寝台列車のなかで次々と事件が起き、偶然この列車に乗っていた名探偵(堺雅人)が解決に挑むというもの(もちろん「オリエント急行殺人事件」のパロディ)。『リョウマの事情聴取』篇は、探偵とリョウマ(竹内涼真)の会話(取り調べ)で構成されている。

「あのとき僕はスマホで米津玄師を見ていました」

「景色も見ないで米津玄師ですか」

 ここでスマートフォンの画面に「Lemon」のMVが流れ始める。さらに「米津玄師」の文字が大写しとなり、「“げんし”ではなく“けんし”です」というナレーションも。このCMで米津玄師の「Lemon」が使われている理由はもちろん、この曲の圧倒的な認知度の高さだろう。

米津玄師『Lemon』

 ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として書き下ろされた「Lemon」は、8月27日付けのデジタルダウンロード(単曲)で150万ダウンロードを突破。日本レコード協会から「史上最速100万DL認定作品」とされ(4月30日付、レコード協会調べ)、オリコンでも「史上初100万DL認定」を受けたこの曲は、リリースから半年以上が経った現在も、驚異的なロングヒットを記録している。2月26日に公開されたミュージックビデオ(監督/山田智和)も1億6000万回越え(CMでは、動画見放題の新サービスとかけて、さらに動画の再生回数が伸びる可能性にも触れられている)。幅広い層のリスナーにリーチしたこの曲は、2018年の音楽シーンを代表する楽曲であることはもちろん、2010年代における最大のヒット曲といっても過言ではない。

 ボカロP“ハチ”としてキャリアをスタートさせ、ロック、ヒップホップ、エレクトロなどを融合したハイブリッドなサウンドメイク、豊かな物語性と生々しいメッセージを共存させた歌詞、ボーカリストとしての豊かな表現力によって、コアなファンをしっかりと惹きつけたまま、リスナーの層を大きく広げてきた米津玄師。その根底にあるのはおそらく“幅広い世代を魅了する、すべての日本人に響く歌を作りたい”という意識だろう。戦後から積み上げられてきた日本の大衆音楽(歌謡曲)を紐解き、そのなかに含まれた豊かな音楽を自分自身の血肉に取り込み、さらに2000年代の新しいサウンドを織り交ぜながら(米津は現在進行形の海外のインディーロック、オルタナR&Bなどにも造詣が深い)、誰もが楽しめるJ-POPへと結びつける。普遍性と新しさを兼ね備えた楽曲こそが米津の真骨頂であり、そのスタンスがもっとも良い形で具現化されたのが、「Lemon」という楽曲なのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる